特集

株式会社を設立することでのメリット・デメリットとは?

株式会社を設立することは、難しいことではないのですが官公庁などへの届出が必要になってきます。複式簿記での帳簿作成など経理業務も個人事業より多少複雑にはなりますが、各種届出・決算業務などは専門家のアドバイスを受けることでスムーズに対応できます。

株式会社設立することは決して難しいことではなく、節税面などでは多くのメリットがあります。今回は、メリットだけでなく、デメリットも確認しながら今さら聞けない株式会社の設立について徹底検証していきます。

株式会社とは

株式会社とは会社法で定められている、合同会社、合資会社、有限会社、株式会社と4つの会社形態のうちの一つです。株式会社の特色は3つあります。

  • 資本金制度
  • 株式
  • 株主の有限責任

株式会社は株主という社員で構成され、株式という制度の上に成り立っているのです。

株主と社員の違い

ここでいう社員は、使用人、従業員とは違います。株式を購入した株主を社員と位置付けています。株主同士、株の所有数で権利の強さが変わってきます。

1株を保有している人より、1,000株保有している人のほうが1,000倍の権利があるということです。

資本金3,000万円、株式発行数10万株ということは、一株300円で出資者を募っているということであり、株を保有している人の数だけ株主(社員)が存在するということです。そして社員の地位を10万個に細分化しているということにもなります。これを株式という制度と呼びます。

株式会社設立のメリットとは?

株式を発行するとか出資者募るとか、なんだか株式会社を設立するのって面倒くさい気がする・・・。これなら個人事業主の方が気楽なんじゃないの?と思われたかもしれませんが、意外に株式会社のほうがメリット多いのです。

この項目では、株式会社設立することで享受できるメリットを12個ご紹介していきます。

  • 社会的信用度の高く資金調達に向いている
  • 赤字の繰越期間が長い
  • 給与所得控除が使える
  • 家族への給料
  • 決算月を自由に決められる
  • 退職金制度が使える
  • 出資者は全員が有限責任
  • 事業承継しやすい
  • 公私の区別がつきやすい
  • .co.jpドメインが取得できる
  • 人材確保に有利
  • 消費税の負担が2年間免除

社会的信用度の高く資金調達に向いている

まず株式会社設立することでの大きなメリットは、「株式会社」の法人格がもつ信用度です。資本金についても1000万以上設定しておくと格段に信頼度は上がります。 起業すると事業価値を高めるために資金投下しますが、出資者が見つかればいいのですが、見つからない場合には金融機関から融資してもらわなければいけません。ほとんどの場合、金融機関からの融資に頼ることになります。

金融機関は、融資する場合、対象企業の実績、事業内容、事業計画などを徹底的に審査するのですが、スタートアップ企業となると過去の実績がありません。ですから法人格が株式会社であり、ある程度の資本金を保有しているかなど確認してきます。株式会社であるほうが融資してもらえる確率も上がってくるのです。

赤字の繰越期間が長い

法人格で、青色申告をしている場合ですと赤字を最長9年間繰り越すことができます。9年も赤字を繰り越すなんて事業を続ける能力不足なのでは?と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、この赤字の繰越は節税にも役立つとても重要なメリットです。

創業したばかりのころは、初期費用に多額の資金を投下してしまい初年度は赤字になる企業は多くあります。個人事業主であっても白色申告でも3年間は欠損金を翌年繰り越すことで繰越控除ができるのですが、法人であれば9年間繰越控除をすることが可能です。

1期目にマイナス200万円の赤字だったとします。翌年は500万円の黒字だとすれば、法人格で青色申告の場合は、1期目法人税は0円です(ただし、資本金1,000万円以下の場合には地方均等割7万円の支払いがあります)。

そして翌年の2期目は、500万円-200万円=300万円の利益に対してだけ課税されるのです。個人事業主で白色申告であれば、赤字を繰り越すことができずに、2期目の500万に対して課税されてしまいます。

スタートアップ企業で、初期投資を多くつぎ込んでしまうと、4~5年ほど赤字経営が続くことが考えられます。この赤字の繰越期間が長いというメリットは中小企業経営者にとっては大きなメリットと言えます。

給与所得控除が使える

株式会社を設立してその会社の代表者に就任すると会社から役員報酬(給与)をもらうことになります。

事業所得も給与所得も、所得税、住民税はかかってくるのですが、給与所得の場合、支給される給与にそのまま課税されるのではなく、「給与所得控除」といって給与から必要経費が差し引かれて、その差し引かれた額に課税されます。ですから税負担がかるくなるわけです。売上からは経費が差し引かれて、支給された給与からは給与所得控除があり税金が安くなる、すなわち二重に必要経費が差し引かれて節税になるということです。

家族への給料

注意していただきたいのは、個人事業主で家族に給与を支払ったとしても経費にはならないという点です。

個人事業主で、確定申告において白色申告をしている場合は、家族が事業を手伝っても専従者ということで売上などの収入を給与として支払っても経費にならないのです。

株式会社を設立し青色申告をすることで、家族に支払った給与は人件費となり経費になります。これを「青色事業専従者給与」と呼びます。

青色事業専従者給与と認められるには

家族であっても、15歳以上で1年のうち半年以上は従事している必要があります。実子であっても中学生、高校生、大学生が土日だけ、長期の休みの間だけ家業を手伝っても青色事業専従者とは認めらません。

そして、下記の点についても気を付けてください。

  • 給与所得を家族に支払う適用を受ける年の3月15日までに青色事業専従者給与に関する届出書を提出しておく
  • その年の1月16日以降に新規事業を立ち上げたときは、事業を立ち上げたときから2か月以内に届け出ること
  • 届出した内容通りの金額、支払い方法で支給すること
  • 常識的な範囲の支給額であること(節税対策になるからといって、あまりにも高額な給与は認めらない)

最後の「常識的な範囲の支給額」ですが、具体的にはいくらぐらいかを知るには、同業他社での支給額を参考にすればいいのですが、家族経営での株式会社となると決算書などを一部上場のように新聞紙面など誰でもみられるように公開していることはほとんどありません。

相場よりも低くしておけば申告、届け出は簡単に通過するかもしれませんが、節税対策にはなりません。

経験豊富な税理士に依頼することで、同じ業界、同じ規模の企業でかかる経費について精通していますので、常識的な支給額の設定をサポートしてもらえます。

決算月を自由に決められる

個人事業主ならば、会計期間は1月1日~12月31日となり決算日は12月31日、決算月は12月となります。これは変えることができません。

しかし、株式会社を設立すると自由に決算月、決算日が決めらることができます。

決算月を自由に決めるメリットとは

決算月を自由に決めることができるメリットは次の3点です。

  • 不利な税制改正や法改正の適用を遅らせることができる
  • 棚卸作業を楽にできる
  • 資金繰りの負担を減らせる

税制改正や法改正が行われるのは多くは4月1日です。しかし、3月31日以前を決算日にすることで不利な改正があった場合に適用を遅らせることができます。

また、小売業で在庫を抱えている場合には、仕入れが多い時期よりもセールなどを行い在庫が少ない時期に決算日を持ってくることで棚卸作業が楽にすることができます。

さらに、ボーナスで人件費がかかる時期、大きな宣伝費がかかる時期を決算月に設定してしまうと、決算後に所得税、法人税、住民税などの納税資金が必要になります。しかし、決算時期を自由に決められるということは出費が少ない時期を決算月にすることで資金繰りを楽にすることが可能です。

このように、経営者が自社の経営状況を判断して自由に決算月を決められることは大きなメリットといえます。

退職金制度が使える

株式会社設立するメリットの一つとして、代表者にも退職金を支給できるという点が挙げられます。個人事業主は、代表者にも事業専業者(家族従事者)にも退職金支給は認められていません。退職金は給与とは違う所得税区分となり、節税効果が高くなります。

退職所得の計算の仕方は下記の通りです。

(退職金-退職金控除額)×1/2=退職所得(課税される金額)

退職金が3,000万円で勤続年数が30年の場合

  • 20年以上勤続:1年あたり70万円控除
  • 20年以下勤続:1年あたり40万円控除

30年間勤務ですと、20年以上勤務した期間が10年間、20年以下が20年間です。

40万×20年+70万×10年=1,500万円が退職金控除額として計上できます。

(3,000万円-1,500万円)×1/2=750万円

750万円に対してのみ課税されますのでかなり高い節税効果となります。

この退職金控除ですが、勤続年数が5年以下の場合は対象となりませんのでご注意ください。

出資者は全員が有限責任

株式会社は、株式を発行して出資者を募ります。株式を購入した人が出資者であり株主となります。株を500万円分購入してもらうと資金として500万が会社に入ってきます。この500万を事業資金として活用し、売上をあげて利益を得ることで株主に配当金を支払うこととなります。

もし、売上が悪く利益がなかった場合、または事業資金を借り入れてその返済ができなくなり1,000万円借金してしまっても、株主が失うのは株式を購入した500万円だけで、1,000万円の借金に関して返済責任はありません。このことを有限責任といいます。

例えば、仕入れ代金を金融機関からの借入金で支払った場合、商品代金などは社長が個人保証(社長が連帯保証人なること)をしていない場合がほとんどなので、支払いが滞っても社長が責任を持つ必要がありません。

事業承継しやすい

最近の傾向として事業承継を社内、親族で行うことが難しくなってきます。それは少子化問題が深刻化してきていることがあげられます。担い手不足ということです。

そのため中小企業でも事業売却して、社外の第三者へ事業承継を検討している経営者も少なくありません。

身内親族であっても、規模の小さい個人経営よりも法人格である株式会社の経営を引き継ぎたいと思います。それが第三者となるとなおさら会社の法人格にはこだわります。個人事業よりも株式会社のほうが事業価値は高いとみなされて高額売却も可能です。

公私の区別がつきやすい

個人事業主ですと、会社名というより代表者名で仕事することが多く、通帳の名義にしても個人名義であることが多く見受けられます。

しかし、株式会社ですと会社名義の通帳を作る必要がありますし、自分の会社に入ったお金であっても勝手に私用で使うことはできませんので、公私混同になることはありません。税務上も法律上も自社の資金を勝手に使用流用はできないのです。万が一、流用しまった場合には、横領罪に問われることもありますので十分にご留意ください。

.co.jpドメインが取得できる

ドメインとはわかりやすく説明するとサイトの住所ということになります。

法人格でも.co.jpというドメインが取得できるのは株式会社、合同会社だけです。日本企業の証でもあるドメインであり、国内の98%以上の東証一部上場企業がこの.co.jpドメインを利用しています。

また、この.co.jpドメインはスパムやフィッシングなどから攻撃を受けにくく安全性が高いと認められています。

会社の信用度を高める点でも、このドメインを使用できることは大きなメリットとなります。

人材確保に有利

大学新卒者が就活する場合、株式会社にエントリーします。有限会社へのエントリーはごく少数でしょう。このように株式会社という肩書には多くの人材が集まります。現代の人手不足状態では、優秀な人材を集めることが経営者の最大の課題です。優秀な人材を確保するという観点からも株式会社を設立すべきということになります。

消費税の負担が2年間免除

資本金が1,000万円未満の法人の場合、創業から2年間は消費税の納税業務が免除となります。

株式会社設立のデメリット

ここまで株式会社設立についての多くのメリットを説明してきましたが、この項目ではデメリットについても解説していきます。起業するにあたりメリットとデメリットの両方を把握しておくことで、法人化が必要かどうかを正確に検討することができます。

赤字でも税金がかかる

赤字で利益が0となっていても、法人住民税として7万円を支払う必要があります。個人事業主ですと利益が0の場合は、住民税も所得税も負担はありません。

役員の任期が決まっている

株式会社設立には、役員を選定しなくてはいけません。

取締役と監査役となり、この2種類の役員において任期がきまっていて、定款において定めておきます。

  • 取締役:2年から10年
  • 監査役:4年から10年

小規模な企業の実務では、取締役2年、監査役4年と設定しているところが多いです。そのため、2年ごとに役員変更の登記が必要となってきます。(同じ人がそのまま役員を継続しても「重任」ということで任期になれば役員登記が必要です)

この役員登記ごとに印紙代が数万円程度必要となってきます。なお、現行の役員登記では、取締役一人でも大丈夫なので、監査役を選定する必要はなくなりました。

設立手続や解散・清算手続に費用がかかる

株式会社を設立する場合でかかると想定される費用は下記の通りです。

  • 法人印作成費用 10,000円程度
  • 登録免許税 150,000円
  • 定款認定手数料 50,000円
  • 法人名義の銀行口座開設 3,000円程度
  • 設立手続きを司法書士、行政書士に依頼した場合 70,000円以上

会社設立の初期費用として最低でも300,000円程度の費用が掛かることになります。

複式簿記に帳簿管理が必要

個人事業主と違って株式会社の経理は少し煩雑にはなってきます。

毎月、月次決算、試算表、損益計算書、総勘定元帳などを作成してファイリングしておく必要があるのですが、これは個人事業主でも記帳業務は適正に行っておいた方がよいでしょう。現在では経理ソフトもかなり優秀なものが多く簿記の知識がなくても、通帳、領収書の金額を入力することで振替伝票、試算表、損益計算書を自動的に作成する機能があります。

また、税理士に依頼することで正確な決算資料を作成するだけでなく、税務申告の代行、節税対策についてもアドバイスを受けることもできます。

交際費に限度がある

個人事業主の場合は、交際費に上限はありません。しかし、法人となると上限額は年間で800万円となります。

個人事業主で、雑多なあらゆるものを経費として計上していて、800万円を超えているとなると法人化は少し検討しなおす余地があるかもしれないです。

個人事業主の場合は、個人で使ったお金と事業で使ったお金の線引きが難しくなり、雑多な項目でも経費とし計上できるのです。

利益の配分は株数に応じる

有限責任の項目でお話していますが、株式会社の株主の責任範囲は、株保有分しかありません。500万円分の株式保有ですと、会社が倒産して借金を負ったとしても失うのは、株式購入資金の500万円のみということです。そのことから利益が出たときに受け取る配当金においても株式持ち分に応じたものしか受け取ることはできません。

合同会社・個人事業主と株式会社とメリットの比較

今までご説明してきた中でも、個人事業主とのメリット、デメリットについて触れてきたのですが、個人事業主のメリットをご紹介しながら株式会社のメリットと比べてみたいと思います。また、合同会社ともメリットにういて比較していきます。

個人事業主のメリット

先ほどの項目でもご紹介しましたが、経費の計上について上限がないところが個人事業主の大きなメリットとなります。この他には次の2つが挙げられます。

  • 開業時の手続きが簡単で、開業届を提出するだけで個人事業を始められる。
  • 会計処理が比較的簡易。1月1日から12月31日までの収支状況を確定申告するだけでよい

合同会社のメリット

合同会社のメリットをご紹介します。

  • 会社設立の費用が安い。登録免許税の6万円のみ必要
  • 決算公告義務がなく、役員の任期がないので登記も不要
  • 節税メリットは株式会社と変わらない
  • 株主総会開催しなくてよい、経営に関する自由度が株式会社に比べて高い
  • 株式会社への法人化も比較的簡単。変更に関する費用も10万円程度

最後の株式会社に変更可能という項目ですが、株式会社を始めから設立するより、合同会社設立→株式会社へと変更した方が初期費用も安くてすみます。会社経営をしてみたいけど失敗するのが不安という方は、まず合同会社を設立して利益が上がってきたところで株式会社へ移行するという選択肢もあるということです。

メリットばかりが目に付く合同会社ですが、株式会社のように上場することができなません。また、出資額にかかわらず配当を受け取ることができるということは、配当金の分配について社員同士でもめることがあります。そのため、複数の人間で出資して合同会社を設立する場合は注意が必要です。

また、金融機関からの融資を受ける際も株式会社に比べて信用度が低く、融資額が低く設定される、または融資が受けられない場合もあります。金融機関、取引先からの信用度においては、株式会社が高くなります。

メリットの多い株式会社を設立するには

どんな事業内容であっても株式会社を設立することで大きなメリットが享受できます。会社設立の初期費用が他の法人と比べ、株式会社は高くはなりますが、節税面や資金調達面で優れたメリットがありますので、長い目で見れば株式会社を設立して経営をスタートするほうが得でしょう。

煩雑な経理、税務申告などは税理士に依頼すれば、経営面にのみ集中することができます。

コンタクト

ご相談・ご質問など、お気軽にお問合わせください。