特集

政策金融公庫から1,000万円資金調達する方法

はじめまして。株式会社ZINEの仁田坂と申します。

この記事では、金融ド素人でありながら、自分で資料を揃え、政策金融公庫から3回、資金調達することに成功した体験談を赤裸々に話します。テンプレートも付けておきますので、かなり実践的な内容だと思います。

もともとぼくは編集者ですが、メディアや経営支援の会社(4期目)をやりながら、医療機器のベンチャーを経営しています。ほかにもう1社、会社を立ち上げていますので、合計3社のデットファイナンス(融資)実績があります。

それぞれ、

  • 1,000万円(日本政策金融公庫 横浜支店より)
  • 2,000万円(日本政策金融公庫 渋谷支店より)
  • 金額非公開(非公開)

という内容です(1社明らかにできないのはすみません!)。
でもちょっと待ってください。「そうか!渋谷支店なら2,000万円融資が下りるのか!」と駆け込むのは早合点。しっかりとした資料を揃え、税理士のバックアップを受けなければ、数千万円の融資は大変難しいもの。単騎突撃(税理士を付けず、自分で窓口に駆け込むこと)した知人は、資料がしっかりしていたにも関わらず300万円しか融資を受けられていません。

ちょっとしたことで成功確率が変わるのが、政策金融公庫からの資金調達です。ぜひ最後まで読んで対策を練ってください。

(編注)この手法は一手段でしかありません。実際に資金調達する際には、信頼のおける税理士への相談をオススメいたします。

そもそも資金調達とは

はじめに資金調達とは何か、そしてなぜ資金調達をする必要があるのか解説します。

デットファイナンスとエクイティファイナンス

この記事ではデットファイナンス(融資)について取扱います。よく間違う方がいるのですが、デッドファイナンス(dead, 死の資金調達)ではありません。デット(debt, 債務・負債)を放出して行う資金調達。これが本特集にて取り扱うデットファイナンスです。

個人投資家やベンチャーキャピタル、エンジェル投資家から資金を募るエクイティファイナンスと違い、デットファイナンスは政策金融公庫や信用金庫など、金融機関が相手です。

そのためコネが物を言う世界ではなく、正しく資料をつくれば融資が受けられます。

ぼくの本業は編集者です。実際、起業してはじめて資金調達をするまでは、資金繰り表どころか事業計画書すら書いたことのない、ズブのファイナンス素人でした。

でも税理士の先生に指導を受け、いろんな本を読み数百時間を資料作成に費やした結果、3回の資金調達に成功しました。1社の資金調達額が公開できないのですが、資金調達の総額は数千万円に及びます。

あなたはなぜ資金調達をするのか?

これを読んでいるほとんどの方が株式会社の経営者か、それに近しい立場にいらっしゃるはずです。本特集で解説している内容は、個人事業主・合同会社など他形態の法人の方でも使える知識ですが、まず資金調達の大事な考え方に触れておきます。

あなたはなぜ資金調達をしようとしているのか。
それは、あなたが資金調達をして、大きなコトを成し遂げたいから、という大前提があるからにほかなりません。
資金調達をしてすぐに会社を畳んでも法的には罰せられないかもしれませんが、あまり良くなさそうですよね。そういうことです。

黒字化には時間がかかる

これから創業する方は、自分の事業がどのくらいで黒字化するか想像がつくでしょうか?
1ヶ月? 3ヶ月? データの裏付けがあります。

出典: 日本公庫 総合研究所「2017年度 新規開業実態調査」

創業後の目標売上の達成状況は、約1年経過後の企業が49.5%もの企業が未達と答えています。また、採算に目を向けても38.2%もの企業が赤字基調。データによると、創業して黒字基調になるまでは平均6.7ヶ月もかかるのです。

資金調達は資本を持たないから行うもの

「資金調達をして、大きなコトを成し遂げたい」

まず、基本的なことですが、株式会社には出資者(資本家)と、事業、労働者(社員)があります。これがあってはじめて株式会社です。一人で起業した方は資本家と労働者が同じ場合もありますが、基本的には別個のものです。

世界初の株式会社は、オランダ東インド会社(連合東インド会社, Vereenighde Oost Indische Compagne)であると言われています。当時はまだ世界が未開拓だった時代。今から約400年前のお金持ち(資本家、出資者)はこう考えました。

「自分の命を危険にさらすことなく儲かる仕組みは作れないだろうか?」

そこで資本家が考えだしたのが株式会社です。

資本家は資本を出して事業を作りました。このときに発行されたのが株券・株式です。そこにお金を持たない船乗りたちが結集。インドネシアに上陸したり、当時江戸幕府だった日本と貿易をしたりするなどの事業を行ったのです。

労働者である船乗りは労働力の対価として賃金を得ます。では資本家は?
資本家は資本を出す代わりに莫大な利潤を手にすることができます。

世界初の株式会社であるオランダ東インド会社は、戦艦・商船を200隻近く、約1万人もの兵隊を保有していたため、会社と言ってもほとんど軍隊。船乗りはほとんど海賊のようなものでした。貿易だけでなく戦争もするし、植民地支配もしていました。なかには戦争や長い船旅による飢餓で命を落とす人もいます。

そう。もともと、労働者が事業を行うということは、資本を持たないものにとっての生存戦略。文字通り命がけの労働だったのです。

現代でもこの構図は変わりません。

知的財産を保有する事業でも、機械が備え付けられている工場でも構いません。そこで労働力を行使することが現代の株式会社の本質です。

ではあなたは、工場を作れるほどの資産家でしょうか? もしくは、大きな資本を供出してくれる資本家とのコネを持っていますか?
そこがポイントです。

あなたは資本家でないのに会社を起こそうとしている。なぜならそうする理由があるからです。
「資本家ではなく、資本家とのコネがない」ならば事業を起こせないか、というと今はそういう時代でもありません。エクイティファイナンスは無理かもしれませんが、デットファイナンス(融資=銀行などからお金を借りることが)できます。1円からだって株式会社は作れる時代、存在する仕組みはありがたく使い、正々堂々とまだ見ぬ大海原に漕ぎ出しましょう。

日本初の株式会社は亀山社中

世界初の株式会社はオランダ東インド会社でした。では、日本初の株式会社は?
それは、みなさんもご存知、坂本龍馬率いる貿易結社「海援隊」の前身となる「亀山社中」でした。歴史に詳しい方はご存知かもしれません。
亀山社中は薩摩藩という強大な資本家から資本を募り、武器や軍艦の貿易事業に従事。果ては薩長同盟など、歴史に残る偉業を成し遂げます。

ちなみにソフトバンクのロゴマーク「〓」は、海援隊の旗がモチーフとなっています。ソフトバンクの公式Webページによると、

「50年、100年先の国の在り方を考え、そのビジョンの実現に向けて激動の時代を駆け抜けた一途な情熱に、心からの共感と敬意を表して、私たちは彼らの掲げた海援隊の旗印を基にした」(引用: SoftBank

……とか。

ソフトバンクも創業当時は今日みられるような偉大な企業ではありませんでした。あなたは資本を得て、どんな事業を描きますか?

政策金融公庫を利用するといくらもらえるのか?

多くの方が使える日本政策金融公庫(以下、政策金融公庫)。厳密には株式会社日本政策金融公庫という名称で、政府系金融機関のひとつ。日本政府が経済発展のために設立した特殊銀行で、民間金融機関が融資しにくい分野へ積極的な融資を行っています。

これを使わない手はない、と思っています。

すごいぞ!政策金融公庫

現在、政策金融公庫が融資している融資先数は、日本全体で実に約87万社。その融資規模は信用金庫や国内銀行と比べても引けを取らない規模。また、その内訳は小口(なかでも小規模事業者)の無担保無保証融資が基本です。

都内における平均融資額は約1,000万円と多く、利用しない手はないと思います。

日本銀行ホームページより。グラフは筆者にて作成

どれくらい小規模の事業者に融資しているか、というとこの通り。

出典: 日本公庫 総合研究所「2017年度 新規開業実態調査」

実に約87万社中、71.6%もの事業者が4人以下の会社なんです。

詳しくはのちほど触れますが、「新創業融資制度」という制度を使った結果、運転資金として、

1,000万円

を創業当初に獲得できました。
(その後経験を積んだ結果、別の制度ではありますが創業5ヶ月目に2,000万円の融資も獲得しています)

1,000万円と聞くと、「なんて大きな金額なんだ!」とビビッてしまう方もいるでしょう。でも会社を始めて事業を行うと、それほど大きな金額ではないことに気付くはず。

社員を雇ったり何かを購入したりすると、すぐに溶けてしまう金額でもあります。偉大な事業を起こせるように、大切に使いましょう。

1,000万円ほどを新創業融資制度で調達すると、返済分と合わせて、毎月約18万円前後ほどの金利+元金を支払わねばなりません。しかし、資本のない人がいきなり1,000万円もの資本を手に、新しく事業を起こすことができるのです。

見方を変えれば、1,000万円を元手に、毎月18万円以上の稼ぎをする社員を雇えばペイする、と考えることもできます。「毎月約18万円」という金額感にはビビらないほうが良いでしょう。

どのくらいの自己資金(資本金)があれば安心か?

ぼくは資本金200万円で創業し1,000万円を獲得したのですが、どのくらいの自己資金があれば安心でしょうか。

これは業種・業態によっても異なります。
たとえば不動産を所有し行うビジネス(オフィス貸しやAirbnbなど)であれば自己資金も相当必要です。パソコンひとつでもサービスを生み出せるITスタートアップならば自己資金が少なくともスキルで食っていけるかもしれません。

大体、自分がやろうとしているビジネスの20〜25%程度の資金を用意すると良い、と言われています(調達可能額は資本金の5倍、ともよく言われます)

出典:日本公庫 総合研究所「2017年度 新規開業実態委調査」

ぼくも最初は「編集者」「オウンドメディア立上げ」などのスキルを使ったビジネスで創業したため、自己資金は少なめでした。

自己資金は創業準備の証です。今は資本金0円でも創業可能ですが、やはりすぐに債務超過に陥ってしまいあまり健全ではない、とされています。ある程度の資本金があることは計画性・事業意欲の証拠になるものです。

また、自己資金があれば利子も下がり、借入負担の軽減・余裕のある資金繰りへと繋がります。資本金をある程度積めるときは積むと良いでしょう。

いつ利用できて、どのくらいで入金されるのか?

「政策金融公庫の新創業融資制度を使えば、1,000万円を調達できるらしい」
そう聞いたあなたは一刻も早く資金調達したいはず。いつ入金されるのでしょうか。

創業前(個人事業主の方であれば法人成りする前)であっても利用できる制度はありますが、多くの方が創業後に融資を探されている状態でしょう。

融資自体は書類さえ整ってしまえば創業して間もないころでも下ります。
また、融資決定から決済(入金)まで、1ヶ月以内(ほとんどが3週間程度)とスピーディーな印象です。

金融機関は朝早くから営業しているのか、融資決定の連絡が携帯電話番号に朝8:30ごろ着信があったときには驚きました。思わずベッドから飛び起きたものです。

公庫は優しい

一般に、希望通り資金調達できた起業家ほど売上は増加傾向にあります。つまり、借入金の活用を含め、必要な資金を調達するということが非常に大切なのです。

出典: 日本公庫 総合研究所「2017年度 新規開業実態調査」

また、希望に足りない場合、公庫が民間(信用金庫や保証協会など)に働きかけもしてくれます。ぜひ顧問税理士経由で希望通りの資金調達ができるよう、お願いしてみるといいでしょう。

政策金融公庫のどんな制度を利用するのか?

ここまで聞いてもまだ融資に消極的な方も多いことでしょう。しかし、政策金融公庫の、特に「新創業融資制度」に限って言うならば、使わない手はないと思っています。

詳述は避けますが、以下の1〜3の条件すべてを満たす方が利用可能な制度です。

  1. 創業から2期(事業開始後税務申告を2期)終えていない方
  2. 「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」等の一定の要件に該当する方
  3. 創業から決算を迎えていない方は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金)を確認できる方。ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。

2の要件、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」とは何でしょうか。
たとえば、あなたが現在マーケティングに携わる仕事をしているとします。このとき、マーケティングのコンサルの仕事で創業したとしましょう。これが「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」という要件です。

マーケティングの仕事をしている人がいきなりパン屋さんをはじめた時、これは新創業融資制度の要件に該当しません。が、そういう人はなかなかいないでしょうから、この条件はクリアだと思います。

3の要件は、たとえば1,000万円の融資を借りたい場合、創業資金総額の10分の1、つまり、100万円以上の自己資金が通帳残高として証明できないとダメ、という要件です。
しかし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」であれば条件は緩和されます。

そしてこの制度、

 担保・保証人が原則不要

であることが最大の特徴となっています。よく 無担保無保証と表現されるのですが、つまりこの制度では保証人(連帯保証人)を付ける必要がありません。

ぼくは大学入学時に奨学金を借りているのですが、これは連帯保証人がありました。ですので、ぼくが返せない!となっても連帯保証人が返さなければなりません。そういう債務(借金)です。

個人事業主の場合も、法人で借りる無担保無保証の融資ほど自由は利きません。それは、法人は「有限責任」、個人事業主は「無限責任」であるから。個人事業主は事業が個人に依存しているため、事業を通して発生した債務に対する責任から逃れることはできません。
そのため、借りたモノは必ず返さなければなりません。

一方法人は「有限責任」。会社が倒産した際に債権者に対し責任を持たなければならないのは、出資額を限度とする。つまり、法人が倒産した場合、出資金(資本金)をスッてしまう以上の金銭的なダメージはありません。
中小企業のオーナー社長が金融機関から融資を受ける際、社長個人の保証を求められることが多いため、事実上は「無限責任」を負っているケースがほとんど。しかし政策金融公庫の新創業融資制度だけは違い、無担保無保証なのです。すごいですね。

金額は、

3,000万円(うち運転資金1,500万円)

までが借りられます。
ちょっと語弊がある言い方かもしれませんが、

  • 自己資金を300万円だけ用意すれば、1,500万円の設備投資(店舗、パン焼き器等)を行い、ほか運転資金(人件費、材料費等)として1,500万円、最高計3,000万円を融資してもらえる
  • 自己資金がなくても、前職で経験した業態であれば、1,500万円まで融資してもらえる

しかも無担保無保証で。これってすごい融資制度だと思いませんか……?

ただし、満額、もしくは高額の融資を受けようと思ったときに、窓口に直接駆け込む、ということは避けてください。顧問税理士を付けてから向かうことを強くオススメします。

顧問弁護士の顔が利く政策金融公庫の支店がひとつはあるはず。そこに行けば手堅く高額の融資が成功するでしょう。

政策金融公庫の制度はどんなものがあるのか?

政策金融公庫にはさまざまな制度があります。
創業して間もない方向けの融資制度を抜き出してみますが、実に多種多様。今回オススメする「新創業融資制度」以外にも、運転資金としての融資限度額が高く、狙い目である融資制度も多数存在しています。

どの融資をつかうのか、顧問税理士と相談してみることを強く勧めます。

融資制度 利用資格 融資限度額 融資期間
(うち据置期間)
普通貸付

事業を営む方(ほとんどの業種の方にご利用いただけます。)

4,800万円
特定設備資金: 7,200万円

設備資金:10年以内(2年以内)
特定設備資金: 20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(1年以内)

新規開業資金 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
女性、若者/シニア起業家支援資金 女性または35歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
再挑戦支援資金
(再チャレンジ支援融資)
廃業歴等のある方など一定の要件に該当する方で、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
新事業活動促進資金 経営多角化、事業転換などにより、第二創業などを図る方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
中小企業経営力強化資金 新事業分野の開拓のために事業計画を策定し、外部専門家(認定経営革新等支援機関)の指導や助言を受けている方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)

政策金融公庫から1,000万円獲得するための方法

政策金融公庫はもともとが政府が根っことなっています。そんな中、カネ余りが指摘され、ちょっとでも有望な事業、有望な起業家には、お金を出して利潤を生み出してもらいたい。金融機関がそう考えるのも当然のことだと思います。金融機関は、会社が産み出した利潤の中から、「利子」を払ってもらうことで成り立つ業態だからです。

その分、大きな利潤を生み出せる起業家にはしっかりとした投資をしたいと考えるもの。事実、ぼくも最初に会社を立ち上げてから4期目で、3社、

  • 1,000万円(政策金融公庫 横浜支店より)
  • 2,000万円(政策金融公庫 渋谷支店より)
  • 金額非公開(非公開)

の資金調達を行っています。

今回はこの中から、

  • 1,000万円(政策金融公庫 横浜支店より)

の経験をお伝えします。

というわけでお待たせしました。ここからがいよいよ、政策金融公庫から1,000万円獲得するための具体的方法です。実際に公庫から1,000万円調達成功したテンプレ付きでお届けします。

自分の事業を振り返ろう

誰に(政策金融公庫から)、いつ(創業後、融資決定さえすれば1ヶ月以内に入金)、どうやって(新創業融資制度を使って、顧問税理士経由で)融資を受ければいいかは、わかりました。

次にやることは、自分の会社でどんな事業を行うのか、振り返ることです。
創業して間もない方はまだ事業計画書すらないはず。が、まずはどんな事業をやっているのか、これからやろうとしているのか、振り返りましょう。

ここでは、ぼく自身の経験を元にお伝えします。

ぼくは2015年4月に株式会社ZINEを創業しました。

株式会社ZINE

もともと出版社、Webメディア、オウンドメディアの制作など、新卒から 6年ほど編集者 の経験を積んでいたため、「価値あるものが正しく認められる世界をつくる」をビジョンに掲げ、価値あるメディア制作をしよう、と決意し起業。

はじめにやっていたのはオウンドメディア支援事業(オウンドメディアの受託制作事業 )です。

ここで、オウンドメディア支援事業の次の事業、 出版事業 を作ろうと決意します。しかしぼくは資本家ではありませんので、元手となる資本がないのが現実。そこで顧問税理士の先生と相談し、政策金融公庫の新創業融資制度を利用することにしました。

このように自分の事業を見つめ、キャッシュが何故足りないのか、どういう事業をやるためにお金を借りるのか、自分の事業を見つめ直すことが重要だと考えています。

何をやるべきなのか、何をビジョンにすればいいのか、そもそも分かっていない、という方は、ぜひとも特集「100年つづく偉大な企業のための、ビジョンの作り方と会社設立の方法」を参考にしてみてください

「100年つづく偉大な企業のための、ビジョンの作り方と会社設立の方法」

公庫はどんな業態に融資を行っているのか

実は、公庫が融資を行っているのはサービス業が中心。開業数の多い飲食業はもちろんのことですが、コンビニよりも多い歯科クリニックや医院への融資、それからスタートアップと呼ばれるIT系(その他サービス業、23.3%)への融資が上位を占めているのです。

出典: 日本公庫 総合研究所「2017年度 新規開業実態調査」

事業計画書を作ろう

事業を見つめ直した後にやるべきことは事業計画書の作成です。以下のテンプレート・スライドを参考に、ご自身の事業計画書を作ってみてください。

こちらは実際に公庫との面談の際、使った資料です。ご自身の経験、これからやりたいことをあてはめていけば、公庫からの資金調達に必要な事業計画書はできあがると思います。

PDFテンプレートファイル(ダウンロード可能)

Mac Keynote テンプレートファイル

スライドのうち、公庫の方に説明したものの中から重要な点のみ抜粋してお伝えします。

まずは会社概要。
どうしていまのオウンドメディア支援事業(受託事業)がやっていけるのか、という既存事業の説明をちゃんとしようと心がけました。

代表プロフィールです。
政策金融公庫の融資は「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」など、代表者の経験を問われることが多いため、どういう経緯があって起業したのかちゃんと整理しておきましょう

代表プロフィールその2です。
すこしエモい話を踏まえながら、なぜ新しい事業に踏み切っていきたいのか説明しました。

株式会社ZINEはメディア事業をやっている会社ですが、これからやろうとしている事業の説明の前に、既存の出版業界を整理しました。

このあたりで会社のビジョン・ミッションを整理しました。
ビジョンは創業から変わりません。今はすこしミッションが異なっていますが、公庫用に分かりやすく伝えられるように整理しました。

将来やりたい事業を整理しました。

新しい事業の補足を追記しました。

詳しくはテンプレートを参考にしてください。

資金繰り表を作ろう

財務諸表にはB/S、P/L、キャッシュフロー計算書、さまざまなものがあります。いろいろあるけれど、政策金融公庫の調達に必要なのは資金繰り表です。

細かい数字はすこしぼかしていますが、政策金融公庫から1,000万円の融資に成功したときのテンプレートを共有します。ダウンロードして使ってみてください(Excel形式などでダウンロードし、ご自身の数値に書き換え可能です)。

テンプレート: 政策金融公庫から1,000万円調達に成功した資金繰り表(Googleスプレッドシート)

詳しく解説します。
Cashin(キャッシュイン、どのくらいの売上がありそうか)とCashout(キャッシュアウト、どのくらいのお金が出ていきそうか)の項目は、自分の事業を概算で良いので見直してみましょう。

法定福利費は、社員(アルバイト以外の社員)の給与と役員報酬のそれぞれに 0.143 を賭けて求めましょう。

その他はできるだけ詳しく埋められる実数のみを埋めていきます。
たとえば、「通信費は確定させられる」「地代家賃も固定費」「会議費は毎月だいたいこれくらい」などです。

重要なのは、自分のやりたい事業にあった数字が入っているかどうか。

たとえば例に挙げたオウンドメディア支援事業では、こんなことが読み取れるでしょうか。どうでしょうか?

  • オウンドメディアに関わる人員を途中から増やした
  • 自社メディア・電子書籍に関わる社員を途中から増員した
  • オフィスは少なくとも2019年3月までは移転しない。つまり、オフィス拡充を目的とした融資を希望しているわけではない
  • 電子書籍などをはじめとした出版事業が育つまでは時間がかかる(キャッシュインが遅い)。そのため、資金残高が減る
  • 途中から資金残高が回復基調にある

もし読み取れなければ、スプレッドシートの読み込みが足りません。

ぼくもド素人の状態から、資金調達のたびにこのスプレッドシートには10〜30時間ほど向き合って作ってきました。最近ではそこまで時間をかけずに資金繰り表が作れるようになってきましたが、それでも慣れが重要です。スプレッドシートをぜひ読みこんでみてください。

ここまでくると、ストーリーが作れるようになってきます。

ストーリーを作ろう

ここからは公庫用のストーリーを作ります。
「ストーリーなんて作りたくない。あるがままで資金調達したい!」その気持ち、痛いほどわかります。でもお金を貸す側の気持ちになってみましょう。資金を融資する必然性がない企業に貸す理由は何でしょうか。それがストーリーです。

オフィス拡充や設備を買うための融資ではないことがわかりました。途中で新規事業に係る社員を増やしたことによる運転資金不足がスプレッドシートから読み取れたと思います。

そこで今回は、

新規事業として出版事業を起こしたい。新規事業に携わる社員を増員するため、2018年12月に最大で700万円ほどのヘコみが生じる。そのために融資を希望する

これをメインストーリーに据えました。

700万円ほどヘコみが生じており、資金繰り表に妥当性があれば、1,000万円くらいは貸してくれるんじゃないかなあ、というのが、何回か政策金融公庫にお世話になった肌感覚です。
もちろん、起業分野が経験のあるジャンルだったから手堅いとか、プラス材料となる理由はあるかと思います。しかし、ぼくは資金繰り表が融資のすべてなんじゃないかと思えるほど大事なものだと思っています。

資金繰り表にないストーリーを事業計画書で訴えても、「プレゼンがうまいんだなあ」としか思われないはずですし、画に描いた餅。ぼくが政策金融公庫の担当者であればそう思います。

現在の事業や利益が出ている事業と、資金調達目的が異なる場合はどうでしょうか。本来やりたい事業と、資金調達しやすいストーリーが異なる場合は多いもの。この場合、公庫用のストーリー(筋道の通った資金計画)でいいのでちゃんとした資金繰り表を作ることをオススメします。が、このあたりはシビアで税理士の先生の判断により異なるため、一度税理士の先生に相談ください。

実際に顧問税理士を付けるとどうなる?

ここまで実際の事例をもとに政策金融公庫からの融資を見てきました。

  • 単騎突撃(税理士を付けず、自分で窓口に駆け込むこと)しないほうがいい
  • 資料を揃え、税理士のバックアップを受けなければ、数千万円の融資は大変難しい

ことを何度も繰り返しお伝えしてきましたが、実際に税理士付きで行く例、そうでない例を見てみましょう。

実は、単騎で突撃した場合でも、公庫の窓口で公庫担当者は将来有望な起業家を追い返したりはしません。アドバイスを行ってくれます。
これはある公庫の方から聞いた実際の事例ですが、この起業家に対し、どんなアドバイスをしたと思いますか?

こんなふうにアドバイスを行ったそうです。

  • 課題
    • 自己資金が少ない。全体の資金計画が過大では?」
    • 「競合他社と比較して商品力はあるのか?」
    • 差別化のポイントはどこか?」
  • アドバイス
    • 「投入できる自己資金は他にない?両親から創業資金を借りてみてはどうか
    • 「店舗設備の相見積もり書を取り、設備資金の削減努力ができないか?」
    • 「他者と比較しての優位性、商品力を客観的に検証し、示してほしい」
    • 「税理士の先生に帳簿の付け方、開業時の届出等相談してはどうか」
    • 「他のアドバイザリーを募集し、広告、Webページ制作、SNSでの発信、売上UPのための広報を相談してみてはどうか」

いきなりこう言われても……というのが正直なところだと思います。

税理士が事業計画書の作成をサポートするとどうなるでしょう。
また別の事例ですが、こんどは輸入菓子卸売業の創業予定事例を見てみます。

  • 経緯
    • 輸入菓子卸売業の創業予定者から、認定支援機関であるA税理士に開業資金についての相談をした。
    • 事業の概要が固まり、必要な資金の調達先として税理士の先生から公庫を紹介。
  • 公庫への相談内容
    • 仕入れ資金として1,000万円の申込(自己資金は500万円)
    • 業界経験が長く、国内外に強いパイプを持つ人材を雇用できたため、国内で販売されていない多種多様な商品を独占的に販売可能

これに対して税理士が以下のアドバイスや業務を行ったのです。

  • 持続的な売上実現のため、新商品確保に向けて海外の展示会へ積極的に参加することを税理士が助言
  • 資金繰りの観点から、役員報酬や従業員の給与等、適正な金額についてアドバイスを実施
  • 税理士が事業計画書をブラッシュアップ

これにより、無事1,000万円を公庫から調達できたそうです。

ぼくらは資金計画立案のプロではありませんし、そもそも事業をやるために起業したわけで、エクセル・スプレッドシートをいじるために独立したのではありません。急に、

  • 「資金計画が過大では?」
  • 「両親から創業資金を借りてみては?」
  • 「優位性、商品力を客観的に検証し、示してほしい」

と言われても無理なものは無理です。お金はかかるかもしれませんが、税理士の先生にお支払いする報酬は、ぼくは必要経費だと考えています。

まとめ

政策金融公庫から1,000万円獲得するための方法は、これだけです。
もっと「財務諸表」と呼ばれる資料を多数用意しなければならないと思いましたか?

●自分の事業を整理
し、
●事業計画書を作成
そして、
●資金繰り表を作る

これだけでぼくは、政策金融公庫から1,000万円を調達できると考えています。

最後に注意点です。公庫の窓口に単騎突撃することだけはやめてください。何度も触れましたが、税理士の先生は大抵、仲の良い政策金融公庫担当者があります。そのため、渋谷区で起業したのに横浜支店の方にお世話になりました。

今回は触れていませんが、信用金庫なども利用はできます。ただ、やはり自分だけでは整合性の取れた資金繰り表をつくることは大変難しいもの。

ぼくは創業当初は顧問税理士を付けていなかったのですが、資金調達のタイミングで顧問をつけ、たくさんの融資を利用してきました。

ほかにも税理士を顧問に付けるとこんないいことがあります。

  • 将来を見通したキャッシュフロー・資金繰りのサポート
  • コンサル(税理士は経営者の一番の理解者)
  • 資金調達のアドバイザリー

ぜひ、税理士法人を味方に付けて順調な滑り出しを!

(制作・編集 / 株式会社ZINE 仁田坂淳史)

監修:宮崎 慎也(みやざき・しんや)税理士

会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

ご相談・ご質問など、お気軽にお問合わせください。