スタートアップを考えている方や、会社を設立しようとする方が気になるのは税理士との付き合い方です。税理士と契約すると良いことがあるなどの話はよく聞くと思いますが、実際のところはどうなのでしょうか。
本記事では、このような方が気になる以下のポイントを解説していきます。より効率的な事業経営を行うためにも、ぜひ参考にしてください。
- 税理士は必要なのか
- 税理士と契約するメリット
- 税理士と契約するうえで知っておきたい注意点
- 税理士と契約するタイミング
- 税理士費用の相場
- 失敗しない税理士の探し方・選び方
スタートアップ・会社設立時に税理士は必要なのか

スタートアップは、短い期間で新たなビジネスモデルや技術革新などを生み出し、新たな市場開拓を目指す動きのことです。会社のことを指す場合もありますし、「起業」を指す場合もあります。
多くのスタートアップは個人投資家やベンチャーキャピタルからの投資を受け、事業を急拡大させ株式市場への上場や買収されることを目指しています。
スタートアップにしても起業するにしても、事業経営の効率化は必須です。その観点から税理士の必要性を申し上げれば、以下に当てはまる事業主であれば必要性が高く、税理士を活用すべきと言えます。
- 資金繰りに困っている
- この先、資金繰りに困るかもしれない
- 目まぐるしく変わる助成金や資金繰りの制度が理解できない
- 経理・税理処理が理解できない
- 経理・税理処理が面倒
- 経理・税務処理に時間をかけずに本業に集中したい
- 税務署からの税務調査が不安
- 売上高が今後増える見込み
- 個人事業主が法人成りを検討している
- 節税したいが節税知識に自信がない
- 節税の知識はあっても実践が難しい
- 無駄な税金を1円も払いたくない
- 経営の頼れるパートナーが欲しい
1つでも項目に当てはまったでしょうか。1つでも当てはまるのであれば、税理士を活用することでその悩みを解決できる可能性が高いです。簡単にまとめると税務・経理処理のサポートを得たい、資金繰りや節税のサポートを得たい方は税理士との契約をぜひ検討してみましょう。
そもそも税理士は、これらで悩んでいたり、事業経営を効率化したいと考えている事業主をサポートするのが使命です。ぜひご活用ください。
「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」
スタートアップが税理士と契約するメリット・デメリット・注意点

税理士と契約するメリットや注意点を紹介していきます。簡単に言ってしまえば、税理士と契約することで税務・経理業務が効率化でき、資金繰りや助成金などの制度活用提案などを受けてより効率的な事業経営が可能になることがメリットです。
しかしながら、税理士を選ぶには注意が必要であったり、契約するにも税理士に支払う報酬がネックとなったりするといった注意点もあります。それぞれ詳しく解説していきます。
税理士と契約するメリット
税理士と契約するメリットは多々あります。以下にメリットを総括します。もし税理士と契約していなければ、活用できる節税策や助成金などを見過ごしてしまうリスクや、誤った経営判断をしてしまうリスク、追徴課税が科されるリスクなどがあります。
- 創業融資や助成金、補助金の活用提案や申請のサポートが得られる
- 税務・経理処理を代行してもらえる
- 事業を成長させるパートナーになる
- 適正申告をしてくれるため、追徴課税を受けるリスクが低くなる
- 会社の経営・経理状態を適切に把握でき、事業経営の正しい判断ができる
- 税理士の業務範囲外でもサポートしてくれる場合がある
- 経理を担当する社員を雇うよりも安く済む
代表的な例ですと、2020年4月時点で最大65万円の控除が得られる青色申告を行うためには、白色申告に比べて記帳などの税務・経理処理が面倒になります。その点、税理士に依頼すれば、会社の時間や手間などのリソースを割くことなく青色申告による特別控除(節税)が可能になります。
また、助成金などを受けるためにも日々の適切な税務・経理処理と毎年の適正な申告は欠かせません。スムーズに助成を受けるためにも、税理士に任せると良いでしょう。
正しい税務・経理処理を行いながら適正申告を行うことで、助成金や資金繰り、経営などをスムーズに行えます。結果として税理士の活用は経理社員を雇うよりも安く済みますし、正しい処理・申告をスムーズに行えないことで生じる損失や手間を考えれば、費用面・時間面で考えて税理士を活用することが良い判断となる場合があるのです。
税理士と契約するデメリット・注意点
しかしながら、税理士と契約するうえで注意しておきたいポイントもあります。これらの注意点を事前に知っておき、十分に対策をしていなければデメリットとなる可能性もあります。
具体的には、以下の2点が注意点として挙げられます。
- 税理士のサービス・サポート内容と料金を理解しておく必要がある
- 税理士が何もかもすべてをやってくれるわけではない
どういうことかと言いますと、平成14年以前は税理士法によって税理士の報酬は決められていました。しかし、現在ではその報酬規定は撤廃されているため、各税理士がある程度自由にサービスや料金を設定できます。
そのため、「このサービス・サポートを利用するならオプションで5万円発生する」というものも出てくるのです。事前にサービス内容と料金は聞きこんでおきましょう。
加えて、税理士と契約する・したからといって税理士が何もかもやってくれるわけではないことを把握しておきましょう。税理士はあくまでも事業をサポートする立場にあります。事業を直接担うわけではありません。
「領収書などを投げれば税理士が処理をやってくれるから税務・経理は知らなくて良い」という考えがもしあるのであれば、排除するべきです。税理士に丸投げするのではなく、「税理士を活用する」という考え方を念頭に置きましょう。
スタートアップが税理士と契約するタイミングはいつが良いのか

以降では、税理士を活用するタイミングについて解説していきます。諸説ありますが、「売上1,000万円以上となる時」が1つの目安となります。これは、「消費税に関する申告」が必要となり、より複雑になるためです。
または、「課税所得が600万円以上となる時」が目安です。この水準になると、税金も大きくなり、節税の知識・スキルが相応に求められるからです。
また、顧問契約などの継続でなく、単発でスポット契約をすることもできます。
以上で紹介したタイミングは目安であり、その他のタイミングで税理士を活用したいタイミングもあります。以降でそれぞれについて紹介していきます。
スタートアップ・会社の設立時
これまでに税務・経理処理の経験がない方がスタートアップ・会社を設立する場合は税理士の活用を検討してみましょう。
これらの処理について甘くみていて、決算・申告時に慌て、困っているという声も多数見受けられます。設立時から税理士と契約することで、大きな安心となるでしょう。また、事業にも注力できます。
記帳や申告に困った時
これまでは税理士がいなくても解決できていた処理も、事業規模が大きくなった場合などは困ることもあります。この場合も税理士の活用を検討するべきタイミングと言えます。
この場合、顧問契約ではなく申請代行などのスポット契約も可能です。
個人事業主から法人成り・法人化を検討する時
個人事業主の場合は、売上が法人と比較して小さい場合が多いため、自力で会計ソフトなどでことが足りることも多いでしょう。しかし、法人化するのであれば今まで以上に複雑な税務・経理処理が発生します。
そのため、法人設立を検討するタイミングで税理士に相談を持ちかけると良いでしょう。
資金繰りに困った時や融資を得たい時
このような場合、税理士の大きなサポートが期待できます。税理士のなかにはこのような資金繰りを得意としている場合も多いです。ぜひ活用を検討しましょう。
申請手続きも面倒なことがありますが、この場合にも税理士経由で毎年申告を適正に行っていればスムーズに手続きを進められます。
経営サポートが欲しい時や経営パートナーが欲しい時
税理士のなかには「経営コンサル」のようなサービスを提供している場合もあります。税理士の立場や強みを活かして、経営上のサポートが得られます。ぜひ活用を検討しましょう。
スタートアップが税理士と契約するとどのくらいお金がかかるのか|税理士費用の相場

最初に税理士に支払う報酬のしくみを紹介します。多くの場合、税理士へ支払う報酬は以下のようになっています。
- 顧問料(月額)
- 記帳代行費用
- 決算申告費用
- その他サポート費用
目安としては、以下を参考にしてください。個人事業主、法人いずれも年間売上高1,000万円以下を前提としています。顧問として記帳代行も決算・申告も依頼するのであれば、高く見積もって個人で年間82万円、安く見積もれば年間27万円程度となります。法人の場合は高くて年間92万円、安くて87万円ほどです。あくまでも参考です。
個人事業主 | 法人(株式会社) | |
---|---|---|
顧問・訪問料 (月額) | 1~3万円 | 1~3万円 |
記帳代行 (月額) | 1~3万円 | 1~3万円 |
決算・申告 (年額・単発) | 3~10万円 | 15~20万円 |
金額のばらつきに関しては、税理士に発生する手間が大きいほど費用は増えます。例えば、訪問・相談回数が年に4回でなく年に12回であれば後者のほうが高いです。
スタートアップが失敗しない税理士の探し方・選び方

税理士選びで失敗したと感じる場合は、以下が挙げられます。これらを防ぐための探し方・選び方を紹介します。
- 親身に対応してくれなかった
- サービスを押し付けられた
- 相談したかったのにレスポンスが遅くて困る
- なかなか気軽に相談できない
フットワークを軽くして気軽に相談する
まずは気軽に相談しましょう。そうしなければ、それぞれの税理士がどのようなサービスを提供しているか理解できません。
親身に対応してくれるか・気軽に相談できるか
親身になって対応してくれるかは非常に重要です。「事業に沿った提案」をしてくれるならば良いですが、悪い例としてはサービスを押し付けられたという声も聞きます。
レスポンスが早いか
早く相談したいといった状況でも、問い合わせや相談をしてからのレスポンスが遅い場合は困ってしまいます。そのため、最初に相談した時などにこの点を意識すると良いでしょう。
ベンチャーキャピタルからの資金調達実績はあるか
これはスタートアップが特に求めるであろう「ベンチャーキャピタルからの資金調達」を得意としているかしていないかということです。
この点は、多くの税理士が「実績はない」と見ておいたほうが良いでしょう。実際、あまり得意としている税理士はいません。
まとめ
スタートアップ・会社設立時に税理士を検討するために必要なことを解説してきました。
税理士は、税務・経理処理を代行しますが、丸投げにするのではなく活用することが事業経営において重要なポイントとなります。
また、税理士と契約するタイミングとしては年間売上高1,000万円以上または課税所得600万円以上が1つの目安として挙げられます。しかし、あくまでも目安ですので、ご自身の事業の状況にあわせて税理士と契約するほうが良いと見込んだタイミングで契約しましょう。安心できるのは、会社設立時です。
スタートアップ・会社設立を考えている方にとって、本記事を少しでも効率的に事業経営するための参考としていただければと思います。