スタートアップ企業では、社員が税理関係の業務を兼任しているところが多いです。専門的な知識がない社員が、勉強しながら税理関係の知識を身に付けていっても良いのですが、業務が円滑に回らなくなる可能性があります。
この記事では、税理士がスタートアップ企業に必要なのか判断する3つのポイントと、事例を紹介していきます。
税理士がスタートアップで必要なのか判断する3つのポイントとは?

スタートアップ企業では、税理関係の資格を持っている社員がいる企業を除いて、税理士が必要になってきます。なぜなら、税理関係の知識に乏しいと、税金関係で損をしてしまう可能性が高いからです。
税理士が必要と判断したときは、次の3つのポイントを確認してみてください。
- 受注額面が税理士の相場か相場以下
- 基本的な節税対策を提案してくれるか
- サービス内容に相違がないか
受注額面が税理士の相場か相場以下
スタートアップ企業が税理士に依頼するときは、税理士の相場を調べて、なるべく安く請け負ってくれる税理士に依頼した方が良いでしょう。スタートアップ企業だと、税理業務に苦労することが多いからです。
ここでひとつの疑問が浮かんでくると思います。
「税理士ってどんなことをしてくれるの?」
という疑問です。税理士に対して、「本当に依頼して大丈夫なのだろうか」といった不安を抱えている人も少なくありません。不安を解消するために、受注額面が税理士の平均相場より低い税理士に相談するのです。
税理士の相場は、一般的に25,000〜50,000円だといわれています。インターネットで広告が載っていたとしても、鵜呑みにはせず、面談をして具体的な依頼料金を確認した方が良いでしょう。
基本的な節税対策を提案してくれるか
税理士を見つける目安として、基本的な節税対策をしてくれるかといったポイントがあります。節税対策として、7つのポイントがありますが、すべての節税対策を提案してくれるかを確認してみましょう。
節税対策における7つのポイント
節税対策における7つのポイントは、下記の通りです。
- 経費
- 青色申告
- 所得分散
- 先払い
- 小規模企業共済
- 倒産防止共済
- 法人化
経費

「経費の区別が付けられる」のは、経理の基本です。しかし、基本を抑えられていない人が多いです。基本が分かっていれば、時と場合によって異なる経費を除いて、経費の区別を付けられると考えておいて大丈夫です。
青色申告
税理士ならば抑えておいてほしいポイントが、やはり確定申告ではないでしょうか。確定申告は個人事業主であれば、「できればやりたくない」と考えている人が多いからです。
相場として、個人の所得税の確定申告だけなら、一般的に月に10,000〜30,000円。すべて任せるのであれば、大体100,000円前後だと考えておいてください。
所得分散
所得分散とは、所得金額によって課税される金額を、配偶者に給料として支給して、納める所得税を減額するという方法です。所得税は、収入が高い人ほど税金を支払うといったシステムが採用されています。
所得税は収入ごとに課税金額が違うので、配偶者に所得を分散させて、課税金額内に収まるように所得を調整できるのです。
先払い
節税対策であるのですが、一年分の家賃を前払いするといった方法です。一般的に「短期前払い費用」とも呼ばれています。先払いをしておくことで、差引分の経費が増えて、経費分の節税になるということです。
注意点は2つあります。「毎年の継続」と「売り上げに直接関連している施設の家賃は、先払いをしても経費として落ちない」ことです。事例としては工場が当てはまります。
工場で製造しないと売る商品が作れません。つまり、売り上げに直接関連している施設という扱いです。
小規模企業共済

小規模企業共済制度とは、個人事業主や小規模企業が事業を辞めたときに、その後の生活や事業の立て直しに向けて、資金を準備しておくための共済制度です。
毎月の掛け金は、一般的に1,000円から70,000円までとなっており、500円単位での選択ができます。支払い方法も、月払い、半年払い、年払いのいずれかから選ぶことができます。
毎月積み立てておくことで、事業を辞めたときに共済金を受け取ることができるので、スタートアップ企業は利用しても良いかもしれません。
倒産防止共済
正式名称は「中小企業倒産防止共済制度」です。倒産防止共済は、取引先企業が倒産してしまったときに、取引先の影響で自社が倒産してしまうことを防止するための制度です。
積み立て金は、一般的には5,000〜200,000円までの金額を5,000円単位で選択できます。自社の景気が悪化したときは、積み立て金を5,000円まで減額することも可能です。
倒産防止共済に加入できる企業は、一般的に1年以上事業を行っている中小企業に限られます。共済金は、担保や保証人を必要とせず、利子も発生しません。
取引先が倒産したときに、共倒れを防ぎ融資をしてくれる制度だといえるでしょう。節税対策のひとつとして、候補に入れておきたい制度です。
法人化

年間の売り上げが600,000円以上であれば、法人化をすることで節税対策ができます。個人から法人に切り替えることで、下記の4つのメリットを得ることができます。
- 給与所得控除を利用した節税
- 旅費日当
- 中小法人の特別控除
- 生命保険と退職金を使った節税
法人化することのメリットも、しっかり伝えてくれる税理士がおすすめです。
サービス内容に相違がないか
税理士に相談するときに躊躇ってしまう理由として、インターネットで検索したときに、ホームページに広告が出ても「本当に掲載されている料金広告で対応してくれるのか?」と不安になるからです。
例えば、相談が無料の弁護士がいるとして、相談して親身に話を聞いてくれる人だなと思ったら、相場よりも料金が高かったり、逆パターンもあったりします。
また、税理士によっては、業務内容ごとに追加料金(オプション)が発生することも珍しくありません。サービス内容に相違がないか確認するためには、一度面談をすることが大切です。
税理士と面談をするときに、下記の項目ごとにチェックすると良いかもしれません。
- 税理士の第一印象と対応
- あなたの立場や目線で、仕事を進めてくれるかどうか
- 仕事の押し付けになっていないか
- 面談に至るまでの返信や対応速度
- どんなことでも気軽に相談できそうな話しやすかがあるか
税理士はたくさんいるので、相性の良い税理士に逢うまでは、妥協しないほうが良いかもしれません。
税理士をスタートアップ企業に導入したときの事例
税理士をスタートアップ企業に導入したときの事例を、いくつかご紹介していきます。事例を参考に「こんな税理士がいる事務所を選べば良いのか」と、ひとつの目安にしてください。

税理士法人ファーサイト ファーサイト公認会計士共同事務所様
払い過ぎた固定資産税を取り返す|国際観光ホテル整備法
事例概要
条例により固定資産税の軽減措置が定められているにも関わらず、高い固定資産税を払わされているホテルで、払い過ぎた固定資産税の取り戻しに成功しました。
ポイント
国際観光ホテル整備法という法律に基づき、国際観光ホテルとして登録されているホテルには固定資産税の軽減措置がとられています。
ところが、あるホテルは国際観光ホテルに登録されているにも関わらず、通常と同じ税率で固定資産税の徴収をされていました。
市役所とのやり取りの結果、払い過ぎていた固定資産税136万円と還付加算金を取り返すことができました。
プロジェクトを振り返って
固定資産税は、法人税や消費税と違い、自治体が納税額を決定し、納付書を送付してきます。よく注意していないと誤った納税額で納付してしまうこともありますので注意が必要です。
特に、「前年より固定資産税が高くなっている場合」や「自社が国際観光ホテルとして登録されているのに、通常と同じ税率(1.4%)で固定資産税を払っている場合」にはその可能性が大きいです。
報酬額:40.8万円(成功報酬の30%)
期間:2ヶ月
太陽光発電事業の設計
事例概要
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」の流れを受け、太陽光発電事業を行うことになったご依頼者様がいらっしゃいました。
事業を行うにあたっての事業形態(個人/法人)の選択、償却方法(定率法/定額法)の選択、リースと購入の選択のどれが税務上有利なのか?を調べて欲しいという御要望がございました。
ポイント
太陽光発電事業については、事業形態(新設法人パターン、既存法人パターン、個人事業パターン)に加えて、消費税の課税事業者選択シュミレーションを行う必要がありました。
消費税は、資本金が10百万円未満等の一定の要件を満たすと、設立から2年間免税事業者となります。このため、免税事業者を選択すると、2年間分の売電収入は免税となります。
しかし、初年度に設備投資を行うため、設備投資の還付を受けられなくなるというデメリットもあり、タイミングを逃すと還付を受けられなくなるなど、特に注意が必要となります。
対応策
試算の結果、消費税の還付を受ける方が有利であり、また、新設法人を設立し、相続対策として株主及び取締役は御子息にするよう設計しました。
報酬額:顧問報酬に含む
スポットのご提案の場合:10万円引用元:太陽光発電事業の設計
居住用不動産の売買手続き
事例概要
1.現在お住いのマンションの名義をA様(ご両親)からB様に変更したい
2.名義変更にあたり、A様(ご両親)へお金を払う(贈与ではない)ポイント
上記の不動産売買の手続きを行うにあたって必要な事項は次の4つです
【1】マンションの価格査定 →税理士に依頼
「支払う金額をいくらにするべきか」という問題があります。親子間の不動産売買の場合、金額が高すぎたり、低すぎたりすると余分な税金がとられてしまうことがあります。
余分な税金を取られないためには、そのマンションが「税務署から見ていくらの価値があるのか」というのを調べる必要があります。
【2】譲渡契約書の作成 →司法書士に依頼
親子間の売買であっても、契約書を作成する必要があります。
【3】所有権の移転登記 →司法書士に依頼
”法務局”という役所で、マンションの名義変更をします。事務仕事に相当慣れている方であれば、自分で手続きをすることもできますが、普通は”司法書士”という専門家に依頼します。
”司法書士”への手数料は、【2】の契約書の作成も含めて、7万円くらいです。
また、”司法書士”への手数料の他に、名義変更のために”法務局”に対して”登録免許税”を支払います。”登録免許税”は”司法書士”がいったん立替てくれて、手数料と一緒に”司法書士”に支払います。
【4】所得税(贈与税)の確定申告 →税理士に依頼
毎年、3月15日までに前年分の「確定申告」をすることになっていますが、マンションを売却したご両親も確定申告をする必要があります。ただし、マイホームを売った場合には儲けの3,000万円までは税金がかかりません。
税金がかからない場合でも、確定申告が必要なこともあります。
コスト
①登録免許税
・物件価格の2%
・名義変更登記をするとき
・司法書士に立替てもらって、手数料と一緒に払う
②不動産取得税
・物件価格の3%
・名義変更登記をした後、半年後くらい
・役所から納付書が届くので、銀行で納付する
③譲渡所得税/住民税
・売却利益の20%
(マイホームの場合は3,000万円までは無税)
④専門家手数料
・司法書士 ・・・7万円前後
・税理士
確定申告が不要な場合・・・3万円~
確定申告が必要な場合・・・10万円~
※物件の規模や評価の複雑さで変わることもあります。プロジェクトを振り返って
ご自身ですることもできますが、「税理士」と「司法書士」に代理でやってもらう方が多いです。
弊社にご依頼いただければ、提携している司法書士がいますので、ワンストップで手続きできます。
報酬額:10万円〜
(上記には司法書士報酬7万円が含まれています)
期間:1ヶ月引用元:居住用不動産の売買手続き
まとめ

この記事では、「税理士がスタートアップ企業に必要なのか判断する3つのポイント」をご紹介してきました。ご覧いただいた通り、税理士がスタートアップ企業にとって大きな役割を果たしています。
つまり、スタートアップ企業に税理士を導入することで、税金関係に割く時間を削減できることが分かりました。
スタートアップ企業で、税理士に依頼するか悩んでいる企業は、ぜひ参考にしてみてください。