税理士に仕事を依頼している人はたくさんいます。しかし税理士に支払う費用について詳しく分かっていない人は多いのではないでしょうか。そこで今回は税理士の費用について解説します。
税理士の費用とは
税理士の費用とは税務に関する仕事を依頼したり、相談した場合に支払う料金のことです。税務に関する仕事というのは、例えば経理に関する仕事や決算書の申告、償却資産や確定申告の代行、各種届出の資料作成などです。各種代行代金は、月額顧問料や決算料に含まれる場合もあります。
税理士費用の判断基準は売り上げ
一般的に、税理士の費用は年間の売り上げが高額であればあるほど、上がる傾向にあります。年間売り上げが大きいほど、事業規模も大きく、税理士が処理する業務が増え、確認作業などの負担や難易度も高まるためです。
例えば従業員が10人の事業と100人の事業とでは、記帳代行の仕分け数や年末調整の数も大きく変わってくると考えられます。
税理士費用の相場
税理士の費用相場は、法人企業・個人事業主のいずれかによって異なることが多いです。法人と個人とで報酬額が異なるのは、事業の年間売り上げによって報酬額を判断されることが多いためと考えられます。税理士事務所によっては、仕分け数を報酬設定の判断基準に使うこともあります。
ちなみに、以前まで税理士費用の相場は「税理士報酬規程」によって定められていました。ですが平成14年に廃止されたことにより、現在は公的な規定は基準がない状況です。
税理士の費用相場①法人
法人の税理士の費用相場は、月額顧問料は1万円以下~30万円超といわれています。(「第6回税理士実態調査(日本税理士会連合会)」)
かなり幅がありますが、1万円以下のケースや10万円以上の高額報酬を支払っている企業はごく一部とされ、一般的には3万円以下~5万円以内が一般的といわれています。また、決算料については10~20万円が目安とされています。
税理士の費用相場②個人
個人の税理士の費用相場については、1万円以下~3万円以内が一般的といわれています。決算料については5万円以下~10万円以内が目安のようです。(「第6回税理士実態調査(日本税理士会連合会)」)
個人の場合、法人に比べ半額程度の費用になることが多いといわれています。もし個人事業主にも拘わらず、法人の報酬相場と同程度、もしくはそれに近い税理士費用を支払っている場合は、適正な報酬額とはいえない可能性があるでしょう。
税理士の費用は下げることが可能
税理士の費用が高いと感じた場合、いくつか見直すことで料金を下げられる可能性があります。
税理士費用のポイント①月額顧問料に含まれる内容を把握する
まず確認したいのが、月額顧問料に含まれる業務内容の把握です。一般的には定期的な訪問や会計状況を見て専門家としてのアドバイス、節税対策や記帳代行などが含まれていることが多いです。必要な業務が含まれているかも確認しておきましょう。
例えば月額顧問料には毎月の訪問が含まれているのに、数か月に1回、もしくはまったく訪問がない場合は、適切な費用でない可能性があるでしょう。
税理士費用のポイント②依頼する業務と自社でできる業務を分ける

顧問料の内容を把握した上で、税理士に依頼が必要な業務と、本来自社が負担できる業務とを明確に分けましょう。何を依頼するかを分けることで、交渉をしやすくなるはずです。
記帳代行がサービスに含まれている場合、自社で行うことにより顧問料の引き下げを交渉できるかもしれません。
あるいは、訪問頻度を減らしてもらうことで顧問料の引き下げを依頼するというのもひとつです。ただ、訪問頻度を減らすことは、税理士側が状況把握がしづらくなるということです。書類や節税アドバイス等の見落としが発生するリスクもあることを念頭に置いておきましょう。税理士によっては、訪問ではなく自分から事務所を訪れるようにすることで、費用を下げてもらえることもあるようなので、相談してみるのもひとつです。
筆者が知っている例では、実際に記帳代行を格安の業者に外注することで、大幅に税理士費用を下げることに成功した例があります。特に記帳代行は正確に入力をしてくれれれば誰でもできますから、業者は慎重に選ぶ必要がありますが、コストカットに役立ちます。
税理士費用のポイント③自社が求めていることを明確に伝える
報酬について疑問を感じ、報酬に含まれる内容や自社でできる業務とを把握したら、税理士に対し自社の求めていることを伝えましょう。その上で、今の費用から値下げができないか相談してみてください。きちんとした税理士であれば、今よりも費用を下げてもらえる可能性が高いです。
税理士費用を払えばどんなことができる?もう一度おさらい
税理士は一旦設定した税理士の費用を、自分からはあまり下げない傾向があります。費用を下げるのを嫌がるのには税理士が行う業務が多いからとも考えられます。税理士ができる業務を抑えておくことで、費用引き下げの材料が生まれる可能性があります。税理士の費用が発生する主な業務については下記の通りです。
<税理士費用が発生する主な業務>
- 月額顧問料
- 税務に関する相談
- 決算書の作成、申告
- 記帳代行(会計ソフト入力代行)
- 確定申告代行
- 消費税等税務申告代行
- 社会保険の相談及び各種代行業務
- 償却資産の申告
- 税務関係書類など各種届け出書類及び資料の作成
- 部門別の管理
- 役員報酬の設定相談
- 資金繰りや融資など経営計画の相談
- 補助金、助成金の相談
- 税務調査の立ち会い
税理士ができる業務は多岐にわたりますが、「税理士」との名称であるように、税務に関することを代行するのが主な業務となります。上記にあげた業務のうち、税理士にしかできない業務もあります。
<税理士の独占業務>
- 税務代理(税務に関することの代行や申告、税務調査の立ち会いを含む)
- 税務書類の作成(税務に関する申告書の作成から提出までを含む)
- 税務相談(節税、税務についての相談を行うこと)
さらに税理士は、「租税債務の確定に必要な事務」に関する範囲内に限っては、社会保険労務士の業務も行うことが認められています。
税理士費用が高いと感じたら?

税理士費用の引き下げを求めても、場合によっては費用を下げてもらえないことがあります。顧問税理士との交渉がうまくいかない場合は、税理士の変更も視野に入れてみてはいかがでしょうか。例えば知人や親しくしている経営者が信頼している税理士がほかに見つかれば、話を聞いてみてもいいでしょう。
また、もし今遠方の税理士に顧問を依頼しているのであれば、近場の税理士を探すのもひとつです。税理士の費用には交通費も含まれる場合があり、遠方であるほど費用は加算されることが多いからです。
税理士は顧問税理士1人ではありません。税理士の費用が高いと感じたら、「こんなものだ」と思わず、まずは行動してみてください。月額顧問料が今より5,000円引き下がるだけでも、年間に換算すれば6万円の節約になります。付き合いがある税理士に報酬の引き下げを交渉するのは難しいと感じる人もいるかもしれません。ですが、税理士の仕事もサービス業のようなものです。お互いが納得して付き合いをしていくことが、長い付き合いにもつながるはずです。
変わってきている税理士のあり方
以前であれば、税理士の仕事というと独占業務である税務に関する事柄のみを取り扱うのが一般的でした。しかし現在は、コンサルティング的な役割も担うようになっています。資金繰りや融資の相談を行ったり、経営についてのアドバイスを行うのも、コンサルティング的な役割の一面といえるでしょう。
また、以前は会計を見て、適切に申告を行うことが税理士の仕事といえました。ですが、現在は会計状況を見て、今後の事業の見通しや改善のためのアドバイスを行うのことも税理士に求められている役割といえます。
時代とともに役割が変わってきた税理士のあり方ですが、適切なアドバイスをくれる税理士は、さまざまな話をしてくれるというのが特徴のひとつです。例えば毎月の訪問で、会社経営に関することだけでなく、家族の話を聞いたり経営者の将来のビジョンなど、事業とは離れた部分の話まで共有できるかどうかです。
いい税理士であれば、毎月訪問してただ書類をチェックしたり、会計入力をするだけでなく、経営者についてさまざまな情報を集めようとするはずです。そうした話の中から、節税や経営を改善したり、さらに業績アップにつながるヒントが生まれることも多いからです。
同じ顧問料を払うのであれば、淡々と作業だけをこなす税理士よりも、自分にとってプラスになる情報を提供してくれる税理士のほうがメリットは大きいはずです。
顧問税理士の替え方
何らかのタイミングで顧問税理士を変更する場合は、一般的に次のような手順を踏むことになります。
- 契約を解約したいことを伝える
- 書類を返却してもらう
- 新たな税理士との顧問契約を結ぶ
新しい税理士と顧問契約を結んだあとは、申告書や総勘定元帳などの書類を提出すれば、引き継いでもらえることがほとんどです。ちなみに、顧問税理士を変更したからといって、税務署に届け出をする必要はありません。
顧問税理士を替えるときのポイント
顧問税理士を替える際、どうやって契約の解約を伝えるか迷われるかもしれません。「顧問料が高い」という理由を使うのもひとつですが、料金を引き下げるから解約しないでほしいと引き留められる可能性もあります。一般的には「知人や取引先などから別の事務所を紹介された」、「友人や親族の中で税理士事務所を開業した」などの理由が角が立ちにくいといわれています。
顧問税理士を替えるときの注意点

顧問税理士を変更する場合はいくつか気を付けたいことがあります。ひとつは契約書の内容を確認しておくことです。税理士事務所によっては、契約の中で「解約を希望する場合は〇か月前までに通知すること」と義務付けていることがあるからです。解約の希望を伝える前に、解約についての規定がないか、報酬はいつまで支払う必要があるかということを合わせて確認しておきましょう。
筆者が体験したトラブルではやはり報酬の支払い時期です。契約書さえ交わしていないことも多く、あとから揉めないように事前に確認が必要です。
スムーズに顧問税理士の変更を完了させるには、先に次の税理士を決めておくことも大切です。先に解約してしまうと、次の税理士が見つからなかった場合、届け出や申告などで対応に困る可能性もあるからです。今の顧問税理士を解約したらすぐに引き継いでもらえるよう、信頼できる税理士を見つけておきましょう。
もう一つ注意したいのは、預けている書類を回収することです。多くの場合、顧問税理士に重要な書類を預かってもらうからです。特に以下の書類は返却してもらうよう注意しましょう。
<返却してもらうべき重要書類>

- 決算書
- 総勘定元帳
- 試算表、仕分け表
- 請求書、領収書等金銭に関わる書類やそれらが記載された書類
- 扶養控除申告書を含む給与関係書類
税理士費用に不満を感じたら相談を!
税理士の費用には月額顧問料や決算料などさまざまな費用が含まれています。ですが、会計入力など自社でできる業務が含まれている場合は、見直しを図ることで報酬の引き下げを交渉する材料になるでしょう。
税理士費用の引き下げを交渉することは悪いことではありません。報酬は絶対固定ではありませんし、相場もあってないようなものです。自社でできることがあればぜひ一度交渉してみましょう。
交渉しても引き下げてもらえない場合は、顧問税理士を替えるという選択肢もあります。以前と違い、税理士はただ単に税務に関する仕事だけをしてもらう存在ではなく、会社や経営者全体をサポートするコンサルタント的な役割も担うようになっているからです。
税理士は顧問税理士1人ではなく、ほかにも大勢存在します。顧問税理士に対し疑問を感じた場合は、自社のことを真剣に考えてくれる税理士を探すこともひとつの選択肢にしながら動いてみてはいかがでしょうか。