夢に見た独立や起業。このとき、重要な存在となるのが税理士です。
ここでは税理士の役割を解説したあと、自分の会社の将来をも左右しかねない税理士の正しい選び方を解説します。
ぜひ、自分にピッタリの税理士を見つけるコツを知ってください。
「税理士のことは分かっているから、探し方だけ知りたい」という方は、こちらから読み進めてください。
税理士とは?
税理士とはどのような役割を担っている人でしょうか?
なかには、公認会計士と混同している人もいるかもしれません。一般の人からすれば、似たような存在だと思っていてもしょうがない部分もあります。
まずは、税理士の役割から説明していきましょう。
税理士は、中小企業の会計を担うのが役割
税理士とは、国家資格を有し、依頼を受けた顧客に税務上の指導などを行う専門職のこと。名前に「税」が入っていますが、単に税務処理をするだけでなく、会計処理を代行したり、申告書を作成したり、節税のアドバイスをしたりします。
個人事業主や中小企業などが対象で、税金を正しく納めつつ、いかに企業にお金を残していくかといった部分に、大きな役割を持っています。また、融資を獲得したり、利益を高めたりという体質に変えるアドバイスをもらえることもあります。
一方、会計士は独立した第三者の立場から企業の財務諸表を監査し、それがきちんと会計規則に則っているかを調査するのが仕事。企業に投資家がいる場合、その信頼を確保するのが仕事です。どちらかと言うと、企業活動に直接貢献するというより、投資家に不利益が生じないための役割が大きく、それが結果的に企業の信頼につながるというイメージです。対象の多くは大企業で、中には何十億、何百億と言った取引をしていることもあります。
こう考えると、起業する際に必要なのは公認会計士ではなく、税理士だと言うことがお分かりいただけると思います。
税理士の3つの役割

税理士の役割を詳しく見ていきましょう。
税理士の職務や使命については、税理士法によって規定されています。第2条によれば、第3者の求めに応じて、
- 税務代理
- 税務書類の作成
- 税務相談
を行うと定められています。
税務代理とは、依頼者の代わりに税務関連業務を行うこと
税務署に対して、納税者に代わって税金の申告や申請を行うことを「税務代理」と呼びます。日本では、法人税や所得税、相続税、贈与税は、自主申告・自主納税となっており、納税額は納税者が自分で計算して納めなければなりません。ところが税法は、非常に複雑な上に、頻繁に改正されたり、期間が決められた税制があったりと非常に複雑です。そこで、それをサポートしてくれるのが税理士と言うわけです。
また税務署は、税務調査を行います。これは、申告した内容に疑問点があるときに申告者に意見を聞いたり、会計帳簿などを調査したりするもので、多くの経営者が苦手としています。そもそも税金に詳しくない人間が、プロ中のプロである税務署の担当者に突っ込まれれば答えられなくて当然。このときに、「税務調査の立会い」と言って、納税者である代表者に同席し、説明や主張をしてくれるのも税理士です。
そもそも税法は、細かい決まりまで法制化されているわけではなく、法律をどう解釈するかによって適用が変わるケースがあります。そのため、どういった解釈で処理したのかを税務署の担当官と議論してくれるのも重要な役割。その結果によっては、再申告や追納が発生するわけですから、経営者としては戦々恐々。税理士の中には、この税務調査対策を特徴にしている人もいるほどニーズの高い業務です。
税務書類の作成とは、税務関連の書類を作成すること
税務書類の作成とは、税務署に提出する税務申告書のほか、各種申告書、請求書、そして不服申立てなどの提出書類等を作成することを指します。
主には、以下のようなものがあります。
- 試算表
- 総勘定元帳
- 法人税・消費税・地方税の確定申告書
- 償却資産税申告書
- 個人事業ならびに法人の決算書
- 所得税・消費税の確定申告書
- 源泉所得税納付書
- 相続税の申告書 など
また、税務署に提出しないものもあります。これは領収書の整理や給与計算、社会保険提出書類なども含まれます。税理士がバックオフィス的な役割を果たしてくれることに驚く方もいるかもしれません。
さらに意外なところでは、会社設立の手続きや、金融機関との折衝交渉に立会ってくれたり、M&Aの仲介や事業継承の支援など、企業の長期的な存続にかかわることにも関わってくれます。
税務相談とは、節税のアドバイスを行うこと
複雑な税務は有効に使えば節税となり、利益を増大させますが、知らなければ納税しなくてよい分まで納税してしまいます。税理士は、税務の知識に長けたプロフェッショナルですので、ここはぜひ、知恵を借りたい部分でしょう。
また、税理士がさらに踏み込んだ経営相談を行っているケースもあります。これは税理士が自ら行う場合と経営コンサルタントなど専門の人とチームを組んで共に動いているケースがあります。
税理士との契約方法はひとつではない

ではここから、自分の会社に合った税理士の見つけ方に触れていきましょう。
税理士の契約方法。3つのパターン
税理士との契約には、大きく分けて3つの方法があります。
- 顧問契約を結び、包括的な業務を依頼する方法
- 顧問契約を結び、一部の業務のみを依頼する方法
- 税務代理のみを依頼する方法
顧問契約を結び包括的な業務を依頼する方法では、会社の税務処理を一任し、従業員の給料の支払いや社会保険の手続きなどの実務業務から、年次業務や節税対策まで、全て一括して契約します。最も良い方法ではありますが、その分、コストは高くなります。
そこまでのコストを用意できないという場合、同じく顧問契約を結び、一部の業務だけを依頼する方法もあります。例えば、帳簿の作成は専用ソフトなどを使って社内でやり、月に1回訪問してもらって税務を代行してもらいます。おそらくこれが最も多い契約でしょう。どれだけの業務を分担してもらうかによりコストが変わってきますので、あらかじめ綿密な契約が必要になります。
もっとコストをカットしたいという場合、年に一度、税務代理のみを依頼するという方法もあります。日頃の帳票類の作成はもちろん、基本的な決算業務も自分たちでやります。税理士に依頼するのは税申告に必要な書類を作成してもらうのみ。決算の対応や税務調査の立会いは、その時に相談するという方法です。企業が小さいうちはよいのですが、ある程度のボリュームになってくると、税務調査の立会いを別途依頼し、かえって高くなったということもありますので注意が必要です。
コストの決め手は作業量による
もちろん、契約に関する部分は税理士によって考え方が違いますが、基本的には、実際の請負作業量がどれぐらいかが、大きく関わります。
例えば、社内に会計に詳しい人がいるとか、まだ事業規模が小さい時は、会計ソフトを導入して日頃の業務を社内で対応できるようにすれば、税理士の作業量が減り、安く契約することが可能となります。
また、税理士に丸投げしてしまうと、領収書は送るだけになり、結果を知るのは書類が来てから。これでは、お金の流れがタイムリーに把握できない人もいます。この辺りは経営感覚による部分が多いので、ベストな方法を選ぶようにしてください。
税理士を選ぶコツ

税理士を探す方法は、以下の3つがあります。
- 自分で探す
- 知人から紹介してもらう
- 税理士紹介サービスを利用する
自分で探す場合は、電話やインターネットで検索して探すのが一般的です。ただこれには時間がかかりますし、ホームページの作り方が上手い人に依頼しがちです。実際に仕事が始まってみると印象が違ったということもあるので注意が必要です。
知人に紹介してもらった場合、その人のスキルが一定以上あるのは確実ですが、相性については別の話。紹介者との相性が良かったというだけで、自分にぴったりの人かどうかは分かりません。また、税理士を変えたいと思っても紹介者の顔を立てて言い出せないこともありますので、人に対して主張するのが苦手だという人は、避けるべきかもしれません。
税理士紹介サービスは、多くの税理士が登録されていて、その中から条件にあった人を紹介してくれるものです。自分が求めるサービスにぴったりの人が見つかりますが、これも相性が合う人かどうかは別の話。紹介サービスを利用したから、必ずその人にしなければならないというわけではないので、人選はドライにやるべきです。
最大のコツは、経営者との相性にある
結局はどの方法で税理士を見つけるにしても、最終的には実際に会って、その人との相性を見るしかありません。税理士は自社の経営に非常に重要な役割を果たすわけですから、なんでも気軽に相談できる間柄になる必要があります。ときには法解釈によって、クロともシロとも判断がつかないケースもあり、「こんなことを聞くのは恥ずかしい」と思っているような関係性では適切とは言えません。
もちろん、コストの問題で、あえて帳票類のチェックだけという契約もあります。それでもいざというときには追加でお金を支払ってでも相談できるような人であることが重要です。
税理士の中には、目の前の業務だけを淡々とこなす人もいれば、聞いてもいないのに経営にあれこれ口を出したがる人もいます。また、アドバイスはしてくれても自信がなさそうな人もいれば、横柄な態度で上から話し、ストレスが溜まるという人もいるはず。
また、実際に会ってみると、料金の話ばかりして、感じている課題や対策に全く触れない人もいれば、課題や対策に的確に相談に乗ってくれそうな代わりに、法外な金額を請求してくる人ケースもあります。
再度言いますが、最終的に大切なのは税理士との相性。中小企業は経営者の意思が大きく会社経営に反映されるものです。つまり、経営者との相性が悪いのであれば話にならないということです。
複数の税理士と会って話をする覚悟を
税理士との面談は、初回無料などということも多いので、できれば何人もの人に会い、そこから一番良い人を選ぶべきです。
ちなみに、会社の重要な情報を多くの税理士に話すことに不安を感じる方もいるでしょう。ですが税理士法第三十八条で、 「税理士は税務相談などを通じて知り得た秘密を他に洩らし、窃用してはならない」と決められているので、そこは安心して構いません。
面談のポイント

初回面談では、多くは1時間前後の時間が設けられます。1時間とは意外と短いもので、中には経営者が思いの丈を話すだけで終わってしまったというケースもあります。この面談で一番大切なのは、税理士の力量と人柄を知ること。後で、「どんな人だったっけ?」とならないよう、事前の準備をしておくべきです。
面談の前に準備すべきもの
事前に用意するべきなのは、会社の決算書類や定款などの関連資料。それに加え、請け負ってもらいたい業務を明確にしておくことです。例えば、記帳代行をお願いしたい場合、月間で何枚ぐらいの領収書があるのかをしっかり把握しておく必要があります。そして、税理士がどのようなスタイルで業務を請け負ってくれるのかを判断するための、チェックリストが必要です。
※ チェック項目としては、
- 業務の分量と料金体系
- 決算対策
- コミュニケーションの方法と頻度
- 経営への助言
- 税務調査時の対応 など
これらは、税理士の方から話してくれることもあるのですが、聞き漏らしがないようにリスト化しておくとよいでしょう。
また、節税対策への助言は、税理士の必須業務ではありません。当然やってくれるだろうという思い込みがある方は注意が必要です。
コミュニケーション手段は自分に合ったものを
連絡手段やコミュニケーションの方法を確認するのも重要なことのひとつです。
やたらと電話好きな人や、直接会って話をしたがる人もいますが、経営者の中には、メールやチャットなど記録を残したい人もいます。また、時間に対する概念も人によって違うため、連絡してよい時間、ダメな時間を事前に確認しておきます。
また、税理士の訪問は、基本的に月に1回程度なのか、四半期に1回なのか、そのイメージもすり合わせておきます。訪問回数に応じて顧問料をもらうというような場合、大した用もないのに顔を出し、それが顧問料に加算されるという場合もあります。聞きにくい部分もあるかと思いますが、 契約を結んでからではさらに聞きにくくなります。できるだけ最初に聞けることは、まとめて聞いてしまいましょう。
さらに、経費削減のために、自社で会計ソフトを使うような場合、そのソフトに対応しているのかもあらかじめ聞いておくべきことです。最近ではクラウドサービスを使い、アカウントを税理士向けに発行し、来社対応時間を短くするケースが多くなっています。
さいごに
税理士は、適当な人を選んでしまうと、知らないうちに粉飾決算や脱税行為を行われてしまい、結果として加算税や延滞税を支払うことになって、経済的に大きな痛手となることも。逆に、適切な節税をアドバイスしてくれれば、会社に資金を残し健全経営を実現できます。ぜひ、相性がよく、スキルの高い税理士と契約するようにしてください。経営者の場合、会社の税務と一緒に個人の相続対策などの相談に乗ってもらえるとベストです。