会社設立

挑戦を志す人たちの港に。不確実さの波を越え続ける女性起業家が目指す「エールが連鎖する社会」

挑戦を志す人たちの港に。不確実さの波を越え続ける女性起業家が目指す「エールが連鎖する社会」

労働人口の減少や、働き方改革が叫ばれるなど、環境の変化が急速に進んでいく今日。ありとあらゆるものの環境が複雑になり、将来の予測は困難だ。不確実性が増していく世界の中で、より個人の生き方やあり方が問われるようになった。「起業」が増えてきているのも、その背景にあるのだろう。

これから起業を考えるあなたは、その選択にどのような「意味」を持たせたいだろうか。

こうした変化を志す人や組織にとって、立ち寄ってエネルギーを補給できる「港」のような存在になりたい。一人ひとりの「挑戦のストーリー」を支える環境をつくりたいー。そんな思いで港屋を立ち上げたのが、五島希里社長だ。

学生時代はマクドナルドで、全国規模で開催される技術を競う大会の接客部門で優勝。その後は大手人材総合サービス会社のフルキャストで新卒2年目にして、新規事業開発や特例子会社設立の主担当を担う。その後、世界最大規模のコーチングファーム、コーチ・エィで教育業界や官公庁で、コーチ・営業・プロジェクトマネジメントを担当。ビジネスリーダーへのヒアリングやインタビュー、コーチングは延べ5,000人を超えるという。

華々しい経歴だが、起業してからは「起業や挑戦に伴う『ストーリーの曲線』を体験してきたからこそ、この仕事に意味を感じる」と語る。そんな五島さんに起業の経緯と、抱えている思いを聞いてみた。

無視しきれなくなったドライビング・クエスチョン

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起業の経緯を教えてください。

小学生のころに見た、発展途上国の女の子の写真がきっかけです。その子は栄養失調でお腹が膨れて、凄く大きな目でこちらを見ていた。その写真を見たときに、何故か固まってしまったんです。

私の親族は起業家が多く、「あなたは何になりたいの?」と問われて育ってきました。当時は「何にでもなれる」と言われている気がして、自分の将来にワクワクしている幸せな子どもだったんです。周りの大人の職業がカタログのように見えて、「こんな仕事もあるんだ」と日々思いながら、仕事の選択肢として大人を見ていました。

だから、その子の写真をみたとき、恵まれた環境にいる自分とのコントラストがはっきりと感じられた。同時に、自分が何になりたいかを見つけられていないことへのモヤモヤと向き合わざるをえませんでした。

「どうしたら生まれた環境を乗り越えて、自分の才能を発揮する人が育つのだろう」という問い(ドライビング・クエスチョン)が生まれて、それが原体験として自分をずっと突き動かしています。

会社員時代のことを教えてください。

サラリーマンの仕事も楽しくそれなりの成果も出していたけれど、生い立ちゆえか、組織の中で働いている=誰かの旗の下にいる感覚があった。「やりたいことをやっている人たちと、それを支える人たち」の構図を意識していたので、オーナーや上司に対してやや遠慮がありました。営業やプロジェクトマネジメント、新規事業の立ち上げなどを任せられたら、とにかくやりきる。その役割を超えてはいけない気がしていたんです。

同時に、小学生のころから持ち続けたドライビング・クエスチョンの解を求めることが止められなかった。一生懸命に仕事をしながら、次第に見えてきた解を試してみたい気持ちが飽和して、2015年に独立しました。

すぐに起業されたのでしょうか?

起業する前に、フリーランスになりました。試してみたかったことをいくつかプロジェクトとして取組みながら、立ち上げ準備をしていたサービスの営業活動をして過ごしていましたね。会社に勤めながら起業の準備をするのも今なら当たり前ですが、当時はそうでもなかった。最初の一年は準備に充てました。

パートナーを見極める大切さ

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会社員時代と、社長になってからで違いはありましたか?

自己資本スタートのベンチャーは、とにかくすべてのリソースが足りません(笑)。人・モノ・資金・知恵のやりくりをしながら、目の前の仕事に取り組み、かつ未来に向けて仕掛けていく必要がある。そのすべてを背負う精神力は、会社員とはくらべ物にならないほど問われると思います。できるかどうかは関係なくて、やらなきゃいけない環境なので。

それでも、ビジョンや仕事の意味を語るときはやっぱり心が躍るので、すごい笑顔で一生懸命に伝えてしまう。そうすると「キラキラした経営者が輝かしいビジョンを語っている」ことだけが相手に見えるから、ファンもフォロワーもごちゃまぜに、いろいろな方が集まってくるようになりました。その中で、本当に一緒に仕事をしていくことができるパートナーを見極めることの大切さと難しさは、切実に感じています。

「一般的な評価軸」から自分を解放する

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御社がこれまで取り組んできたサービスについて教えてください。

サービスの前にちょっとだけ私の仕事のスタンスを。会社というと、決め打ちでサービスを仕掛けて勝負をかけるイメージがあるかもしれません。でもこの「一発勝負」という受験や就職活動、会社員の評定などの「一般的な評価軸」から自分を解放することで、自由度がぐっと増すと感じています。

特に起業は、失敗を恐れると何もできません。でもやっぱり、新しい世界に踏み出すことへの恐怖は誰にもあって、それは本能的なもの。だから少しずつ自分の解釈をスライドしていくと良いと思います。「挑戦するんだ」と追い込みすぎず「試してみよう」とか、「成功するんだ/失敗しないように」と画一的な基準で評価するのではなく、「実験結果を知りたい」という好奇心でとらえるとか。私は、ドライビング・クエスチョンを自分の中心に据えて、思いついたものをどんどん試すスタンスで仕事をしています。

これまで試したことをいくつかご紹介します。最初はスカラシップヤードという名前の、教育×クラウドファンディングのサービスでした。各学校名を冠したサイトをフランチャイズ形式で貸出し、総合的な学習の時間等で生徒が取り組む社会的なプロジェクトを掲載していきます。生徒は社会と関わりながら、学びを活かしたり、自分と向き合ったり、チームで取り組むことを体得していくのです。

また、寄付金を集めて実際に資金を元手に責任を持って活動を起こします。ちなみに、集まった資金の一部は、運営会社の手数料ではなく、学校の奨学金になるので、挑戦が増えるごとに奨学金が増えていきます。生徒の成長も、プロジェクトマネジメントやいわゆる「21世紀型スキル」の軸で伸長率を測り、可視化できるようにしました。

先生方が授業で私が作った教材を使っていたり、子どもたちが私のサービスのことを喋っていたり。お客様が自分たちのものとして、サービス名を話してくださっているのを聞いたときは感動しましたね。

しかし、子どもたちの成長に寄与することはわかりましたが、1つの学校だけで取り組むと、「問題の切り取り方がとても似通ったものばかりになりがち」という課題が見えてきました。そこで、子どもたちの教育に手を貸したいという大人を集めて、オンラインサロン形式で相談したり、問題の掘り下げができるような仕組みを構築したりしてみました。すると今度は、意気揚々と待ち受ける大人側と「問題点を明確にして相談する」ことに慣れていない学校側でギャップができる、という課題が見えてきました。つまり学校ごとで取り組んでいてはだめだということが見えたので、今度はまったく違う形式で進めていくプランを育てています。そんなふうに、気づいたら試して、うまくいったものは残して、だめだったらやめて、を繰り返しています。日々、プライドを持つ場所を間違えないように留意しています。

不確実さと向き合うために

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今後はどんなサービスをつくっていきたいですか?

最近もいろいろ試しています。最近まじめにふざけてやってみたのは「スナックコーチ」です。「誰にも評価されず、自由に話す心地よさ。 出てきたひらめきが、徐々にカタチになる面白さ」を体験していただくために、スナック風イベントを開催してみました。「コーチングの敷居の高さや、始めてみないと価値が伝わらない難しさを、どうしたら払拭することができるだろうか?」という問いからスタートして、コーチングの方から歩み寄ってみよう、コーチ自ら挑戦しよう、そんな試みでした。

やってみたら「士業と掛け合わせてやってみたい」「うちのオフィスに出張して対話を作り出してほしい」と、思わぬ声が生まれて驚いています。オンライン参加も受け付けたところ、アムステルダム、五島列島、岡山、広島など、本当にさまざまな場所からご参加いただきました。

もうちょっとまじめなプランをお話しすると、スタートアップ・ベンチャーの拡大期の人とチームの支援や、フリーランス・個人事業主の方々の仕事を加速させる支援が始まりつつあります。また、先ほど触れたスカラシップヤードも、全く別のプランで準備が進んでいます。

明確なプランやビジョン、目標達成に向けてはコーチングがとても機能すると思います。しかしながら、今の時代に起業も含めて自分の足で歩もうとするとき、どうしても不確実さと向き合わざるをえません。そんなときに「ドライビング・クエスチョン」という心沸き立つ問いをひとつ持っておくことを提案したところ、ワークショップが満員御礼になったり、大学の授業にお呼びいただいたり、とても多くの反響をいただいています。

そんなふうに自然に育っていくサービスもあれば、自分の想いから始まってサービスになっていくものもありますが、これからもどんどん試してみたいと思っています。最近は「こんなことやりたいです」「やりたいことがはっきりしなくて不安なんです」など、いろんな状態にある方から相談を受けたり、一緒にやってみたいと声をかけてもらったりすることが増えてきました。今はアライアンスを組んだりインターンで受け入れたりすることでご一緒することが多いですが、そういう意味でも挑戦のストーリーを支えていく環境になれるならば、会社を作ってよかったと感じています。

等身大で居られる場所を

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今年で会社設立から4年目に入りますが、今後目指す世界を教えてください。

私は卒論でESD(Education for Sustainable Development)について書いています。一人ひとりのリーダーシップが他者や社会のために向くことで、よりよい社会が実現できるという考えで、私はそれを企業活動で実践することを選びました。そのために私は一人ひとりの挑戦のストーリーを支える環境の構築をミッションにしてます。挑戦をすれば、人知れず苦しい思いをしている期間もあるかもしれないし、だれにも言えない悩みを抱えている時期もあるだろうし、本当にいろいろなことが起きる。その中で他者から応援されながら、ちょっと前進できたとする。そうして挑戦できた人は、今度は誰かの応援にまわったりする。だから港屋のビジョンでは「エールが連鎖する社会をつくる」としています。その道のりにあるものすべてとは言わないですけど、その挑戦するストーリーを支える環境として、いくつかオプションを用意していきたい。挑戦を志す人の「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」の場所にしたいです。

最後に、起業を目指す人へのメッセージをお願いします。

起業した後の話から伝えたいメッセージを考えると、自分が強くなくてよかったり、「経営者」ではなく「現存在としての自分」の感覚を取り戻したりできるような場所を持つことが大切だと思っています。たとえば私にとってのそれは、友達・旅・運動なのですが。

会社を出て、自分の名前で生きていこうとすると、外にいる人が全員関係者になりがちなんです。まずは名刺交換をして始まる。そうすると、みんなが仕事関係者になってしまう。だからくだらないことも一緒にできて、絶対に自分を「社長」と呼ばない友達の存在に、私は何度も助けてもらいました。自分の「コンディションの整え方」を知っておくといいと思います。

それから、たしかに自分で決断していくことは大事だけれど、本当に迷ったり困ったりしたときに頼れる経営の先輩や、自分の考えを整理するためのコーチ、さまざまな領域のプロフェッショナルなど、状況に応じて「頼り先」をいくつか持っておくことも、いざというときの支えになるのではないかと思います。

でも最もお伝えしたいのは、起業はあくまでも手段だということ。方法はなんだっていいと思います。そしてやりたいことが見つからないことや、やりたいことで起業できないことを責めないこと。突然ある日降ってくる人もいるかもしれないし、体験が積み重なった先に自然に道ができているケースもよくお聞きします。ビジョナリーな経営者の体験談に自分を重ねすぎることなく、一人ひとりが「自分は自分らしいストーリーを描いていいんだ」と思えるといいなと願っています。私はそういう、挑戦を志す一人ひとりの手助けをしたいと思っています。(起業しちゃう人というのは、たぶんこういうメッセージを聞いてるようで聞いてなくて、勝手に何か始めちゃう人だと思います笑)

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【ここまでお読みいただいた方へのお礼】
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「Driving Question 個人セッション-Basic」コース
初めてドライビング・クエスチョンを作る方や、以前ワークショップを受けたけれど、自分ひとりでじっくりと向き合いたいという方のためのセッションです。2回(各60分)のセッションに分けて、自分だけの問いを生み出します。

通常30,000円(税込) → 20,000円(税込)

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※2019年10月末日まで、お一人様1回限り有効です。
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