「お金を借りる」と聞くと、銀行やクレジットカードのローン、消費者金融などが一般的でした。近年ではお金を貸したい個人投資家からお金を融資してもらう「ソーシャルレンディング」という方法を利用する方法があります。しかし、ソーシャルレンディングはまだ一般的ではないことから、どのような税金が発生するか分からないという方も多いでしょう。今回は、ソーシャルレンディングの仕組みと課税される税金について解説します。
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングは新しい投資方法として注目されていますが、実際にどのような仕組みのものなのでしょうか?これからソーシャルレンディングを始めたい方は、必ず把握しておくことが大切です。
ソーシャルレンディングの仕組み
ソーシャルレンディングとは、お金を借りたい企業である借り手(ボロワー)と、お金を貸したい個人投資家である貸し手(レンダー)をネット上でマッチングするサービスのことです。分かりやすくいえば、支援したい人に個人のお金を援助するクラウドファンディングと同じ仕組みで、「貸与型・融資型クラウドファンディング」と呼ばれることもあります。
貸し手側は「匿名組合契約」を交わした上でお金を投資し、ソーシャルレンディング会社が集めたお金を借り手の企業に融資します。融資する際は貸出金利を付けており、返済時にその利子を会社と貸し手の双方が受け取ることで報酬を得るのが基本的な仕組みです。
たとえば、15%の貸出金利を付けている場合、会社は5%を取得し、貸し手は10%の利回りを取得できるという流れです。10%という利回りは他の投資方法よりも高い数字である上に、貸し倒れのリスクが少ない効率的な資産運用方法として人気を集めています。
また、ソーシャルレンディングのメリットは貸し手側だけでなく、借り手側にも次のメリットがあります。
- 銀行の融資実績が少ない企業でも融資が受けられる
- 銀行は新規事業をリスクと捉えられるが、審査を通れば融資が受けられる
- 銀行で融資を受けているが、追加の融資が欲しい
銀行の融資は信用や実績が必要であり、場合によっては融資を受けられないケースも珍しくありません。ソーシャルレンディングなら銀行のように実績が問われることがなく、厳正な審査に通過さえできれば融資を受けることができます。
ソーシャルレンディングの税金について

ソーシャルレンディングの最小投資額は1万円であることから、元本が少ない主婦の方でも資産運用を始めることができます。しかし、手軽に始められるからこそ、以下のような税金がかかることを事前に知っておきましょう。
ソーシャルレンディングは源泉徴収で税金を回収している
ソーシャルレンディングで得た利益は収入にあたるため、所得税が必ず発生します。しかし、ソーシャルレンディング会社は分配金を振り込む前に、「源泉徴収」として税金を一部徴収するのが一般的です。源泉徴収分のお金は会社側で所得税として預かり、会社が代わりに所得税を国に納めています。
この際の源泉徴収の税率は一律20.42%ですが、この率は目安に過ぎず、年収によっては実際に支払う税金が変わるケースがあります。つまり、源泉徴収で所得税が引かれていても、確定申告をして正しい税金を支払う、または払い過ぎた税金の還付を受けることが必要になります。
ソーシャルレンティングで得た利益は雑所得扱い
ソーシャルレンディングで得た利益は「雑所得」にあたり、年間20万円以下なら確定申告が不要です。しかし、ソーシャルレンディング以外の資産運用をしていたり、副業をしたりする場合は、合算して20万円を超えるかどうか確認する必要があります。
雑所得にあたる所得は、FXや仮想通貨、アフィリエイトやネットオークションの利益、セミナーの謝礼金などがあります。会社の他にアルバイトなどで副業をしている場合は、雑所得ではなく給与所得にあたるので注意しましょう。
ソーシャルレンディングは総合課税として計算し、確定申告する
ソーシャルレンディングで得た収入は雑所得にあたりますが、課税方法は「総合課税」という方法で計算してから確定申告を行います。総合課税とは、雑所得や給与所得などのすべての所得を合算して税率を決めることで、税率は以下の計算方法で求めることができます。
- 雑所得、配当所得、給与所得、事業所得、不動産所得などの項目ごとに所得を計算する
- 上記に該当する所得をすべて合算した後、給与所得控除などの控除を差し引く
- 2.の数字を所得税の速算表に照らし合わせ、所得税額を計算する
所得税の速算表とは、195万円以下~4,000万円超までの7段階で税率を求めることができる、国税庁が提示している表のことです。所得が多いほど税率が増える「超過累進課税方式」が特徴で、最低額の195万円以下で5%、最大の4,000万円で45%もの所得税が課税されます。
ソーシャルレンディング以外に所得がある場合は、雑所得だけで計算しないように注意しましょう。
まとめ
ソーシャルレンディングは、専門の会社を通して借り手に融資を行い、貸出金利から収益を得る新しい投資方法です。最低1万円という少額から始められる上に、貸し倒れのリスクが低いため、これから投資を始めたい方は興味を持つでしょう。ただし、ソーシャルレンディング会社では源泉徴収を行っていますが、給与所得と合算した税率で確定申告をする必要があります。会社勤めの傍らでソーシャルレンディングをする場合、会社で源泉徴収が済んでいると勘違いしないように注意しましょう。