「事業が苦しくなって国からの支援策などがないか探しているけど、セーフティネット保証って何?」
2020年7月現在、新型コロナウイルス感染症による経済への影響や、線上降水帯による大雨被害など、災害による事業経営への影響が甚大です。
このような背景のなか、国が掲げる事業者への支援策が注目されています。本記事では、事業者への支援策のなかでも大きな影響のある「セーフティネット保証」に関連する以下のポイントを解説します。
- セーフティネット保証制度とは
- 危機関連保証制度とは
- 申請に必要な書類と流れ
ぜひ事業経営の維持・発展にお役立てください。
セーフティネット保証制度とは

セーフティネット保証は、「経営安定関連保証」とも呼ばれている保証制度です。通常の保証制度(一般保証)は、事業者が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が最大2.8億円の保証枠内で保証し、事業者が融資を受けやすいようにしています。
それに対しセーフティネット保証は、一般的な保証枠である2.8億円とは別枠で、経営の安定に支障をきたしている事業者の場合、さらに追加で2.8億円の保証枠を設けている制度です。
具体的には、経営の安定に支障をきたしている旨を、その内容ごとに1号から8号に区分され自治体に認定してもらい、保証が受けられます。詳細は後述しますが、ごく簡単に表すと、以下のような場合が経営安定関連保証を受ける際の経営支障とされています。
- 大型の取引先企業が民事再生を行った
- 事業活動の制限を行っている事業者と関係があるために売上高などが減少している
- 事故などにより売上高などが減少している
- 自然災害によって売上高などが減少している
- 業況が悪化している業種である
- 取引していた金融機関が破綻し借入が減少した
- 取引していた金融機関の合理化施策により借入が減少した
- 金融機関の整理回収機構に対して債務を持っている
現時点では、対象となりそうな要件があるかどうかという視点で見ていただければと思います。2020年7月現在は、新型コロナウイルス感染症(自然災害)などにより、多くの小規模事業者が当てはまるかと思われます。
また、現在では昨今の景況感を踏まえ、「創業1年未満の事業者も対象」とされているなど、経営安定関連保証の要件認定が従来よりも広がっています。
本記事では、記事執筆時点で多くの事業者が注目する自然災害、業種の業況悪化により受けられるセーフティネット保証4号、5号について最新情報を解説しますのでぜひ参考にしてください。
セーフティネット保証4号

セーフティネット保証4号は、今般の新型コロナウイルス感染症のような「突発的災害(自然災害)」の発生によって売上高などが減少している事業者を支援するための措置です。
実際には、災害により影響があったと認められた地域によってセーフティネット保証4号の認定が受けられるようになります。
以降ではセーフティネット保証4号について、以下のポイントを解説していきます。
- 対象事業者・認定基準
- 保証割合
- 限度額
- 手続き
なお、情報は更新される可能性もあるため、詳細は以下参考リンクを参考にしてください。
参考:セーフティネット保証(4号:突発的災害(自然災害等))
対象事業者・認定基準
セーフティネット保証4号の対象となる事業者は以下の要件を「どちらとも」満たしていなければなりません。
- 指定地域において1年間以上継続して事業を行っている
- 災害の影響を受け、原則として最近1ヶ月間の売上高などが前年同月比20%以上減少
- さらに、当月を含みその後3ヶ月間の売上高などが前年同期比20%以上の減少が見込まれる
つまりは、指定地域に最近入った事業者でなく、売上高などに20%以上の影響があること、そして継続的な影響が見込まれる事業者が対象です。
内容
セーフティネット保証4号の保証内容などは以下のとおりで、一般保証とほぼ同様の内容です。
保証内容はほぼ同じですが、一般保証とは「別枠」であるため、一般保証枠最大2.8億円に本保証枠最大2.8億円を加え、合わせて最大5.6億円の保証枠を得られます。
保証料率 | おおむね1%以内で、各信用保証協会に応じて |
普通保証限度額 | 2億円以内 |
無担保保証限度額 | 8,000万円以内 |
無担保無保証人保証限度額 | 2,000万円以内 |
据置期間 | 1年以内 |
返済方法 | 均等分割返済など(1年以内は一括返済可能) |
注意しなければならない点は、制度として最大2億円の普通保証限度額が設定されていますが、「実際に最寄りの信用保証協会では1億円の場合があります」。
そのため、最新情報や詳細については最寄りの信用保証協会にお問い合わせください。
手続き
セーフティネット(経営安定関連)保証を通じて融資を受ける際は、次のような流れとなります。
- 本店所在地の市町村へ認定申請
- 金融機関または所定の信用保証協会へ保証付き融資の申し込み
また、手続きにおいては「金融機関ワンストップ手続き」が国から推奨されています。金融機関ワンストップ手続きとは、以下のようなイメージで、事業者が金融機関窓口において一連の手続きを行えるようにするものです。

画像引用元:金融機関ワンストップ手続きの推進
従来は、事業者が直接、自治体に対し認定申請を行い、認定書が交付されてから金融機関もしくは信用保証協会へ保証・融資の審査を申し込むといった流れでした。
金融機関ワンストップ手続きにより、事業者は融資相談と保証・融資申し込みを金融機関窓口のみで完結し、金融機関が自治体への認定申請や保証審査を行います。
これにより、認定申請、保証審査、融資までスムーズに行えますが、金融機関と自治体、保証協会の連携が必要なため、2020年7月時点では、この金融機関ワンストップ手続きができない自治体や金融機関も多数あるようです。
また、対象事業者によっては自治体から利子補給が行われ、融資の一部を当初3年間無利子にできます。
必要な書類については、「セーフティネット保証の申請に必要な書類と流れ」にて後述します。
セーフティネット保証5号

4号は自然災害で経済的な影響が生じる「地域」にて発動される保証制度でしたが、セーフティネット保証5号は全国的に業況が悪化している「業種」を支援するために発動される保証制度です。
4号、5号と別々の保証制度・内容だと感じる方も多いかもしれませんが、制度としての保証内容は同じです。また、手続きも4号と同様、市区村長の認定を受け、金融機関または信用保証協会の窓口で保証・融資の申し込みを行います。
ただし、各信用保証協会によって保証内容に差があるため、詳しくは最寄りの信用保証協会に確認ください。
対象事業者・認定基準
セーフティネット保証5号の対象事業者は、以下のとおりです。指定業種と発表された業種で、自治体の認定を受けた事業者かつ、以下の要件の「いずれか」を満たしている事業者です。
- 指定業種に属する事業を行っており、最近3ヶ月間の売上高などが前年同期比5%以上減少した中小企業者
- 指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者
基本は前者の要件ですが、後者を簡単に表すと、材料費が高騰しているのにもかかわらず景気が悪く値上げできていない中小企業者と言えます。具体的な認定要件については以下のリンクを参考にしてください。
業種の指定については以下参考リンクに掲載されています。新型コロナウイルス感染症により発動されている今般では、「全業種」が指定されています。以下を参考にしてください。
参考:セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種(全国的))
なお、ご自身の事業が「どの業種」に分類されるのかについては、「日本標準産業分類」において該当する業種を特定することとなります。
参考:日本標準産業分類(平成25年[2013年]10月改定) | 統計分類・用語の検索
参考:総務省|統計基準・統計分類|日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)-目次
危機関連保証制度とは


画像引用元:新型コロナウイルス感染症で 影響を受ける事業者の皆様へ
危機関連保証制度は、一般保証の別枠である経営安定関連保証とは「さらに別枠で最大2.8億円」の保証枠がある保証制度です。
今般の新型コロナウイルス感染症による影響によって初めて発動されることになりました。セーフティネット保証の1つですが、経営安定関連保証と違い、一般的に利用されていないため、危機関連保証はセーフティネット保証としては広く認知されていません。
制度概要としては、東日本大震災やリーマンショックと同程度以上の危機時に、資金繰りDIなどが短期かつ急速的に低下することで信用収縮し、国が認めた場合に全国・全業種を対象として債務を100%保証します。
対象
次の「どちらとも」に当てはまる事業者が対象です。
- 金融取引に支障を来しており、金融取引の正常化を図るために資金調達を必要としている。
- 下記の認定案件に起因して、原則として、最近1か月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれる。
「下記の認定案件」としては、「新型コロナウイルス感染症」が認定されています。
参考:認定リスト
保証料率
保証料率については、年率0.8%以内で、各信用保証協会が定めています。経営安定関連保証が「1%以内」であるので、さらに事業者に優しい制度となります。
なお、条件を満たしていれば「保証料ゼロ」もしくは「保証料半額」となります。
保証限度額
保証限度額は以下のとおりで、一般保証、経営安定関連保証(セーフティネット保証)と同じですが、これらとは別枠で利用できます。

画像引用元:危機関連保証制度(大規模な経済危機、災害等による信用収縮への対応)
手続きの流れ
危機関連保証を受ける際も、セーフティネット保証4号、5号と同様に自治体の認定を受けて保証・融資を申し込みます。
なお、指定期間は2020年7月現在の情報では「2020年2月1日から2021年3月31日まで」です。
セーフティネット保証の申請に必要な書類と流れ

これまで、経営安定関連保証、危機関連保証について解説してきました。しかし、概要がわかったところで保証を受けられるわけではありません。
ここでは、ネックとなる自治体の「認定」に必要な書類などを解説します。また、先ほども紹介しましたが、「金融機関によるワンストップ手続き」を利用できる際はぜひ利用しましょう。
認定に必要な書類は、各自治体によって多少異なる場合もありますが、本記事では一例として「名古屋市」を例にとって解説します。実際に認定を受ける際には、都道府県の「中小企業振興課」もしくは「商工課」に問い合わせるようにしましょう。
以下が認定に必要な申請書類です。(名古屋市)
- 認定申請書
- 売上高等内訳書
- 月別売上高表
- 地域内での事業実態が確認できる書類(履歴事項全部証明の写し/直近1期分の「確定申告書の控」の写し)
- 実印(法人の場合、法人代表者印、会社実印)
- 直近の所得税確定申告書、青色申告決算書(法人の場合は法人税申告書、決算書)
なお、法人の場合は「法人登記簿謄本(有効期間3ヶ月)」も必要です。
流れとしては、以上の書類を「認定会場」へ持参します。その後、「引換証」が渡されるため、後日、認定会場で認定証の交付を受けます。
参考:セーフティネット保証4号にかかる特定中小企業者の認定のご案内
セーフティネット保証制度のまとめ
セーフティネット保証制度について解説してきました。セーフティネット保証は、経営の安定に支障をきたす事業者に向けた保証枠の拡大措置制度です。
2020年7月現在では、あらゆる相談窓口が設けられ、給付金・助成金・補助金、無担保融資、無利子化などの施策が多くあります。
ぜひこの機会に本記事を参照しつつ、ご自身の事業に必要な保証制度を選び、自身で最寄りの信用保証協会の情報を検索しながら自治体からの認定を受けるなど行動に結びつけてほしいです。