最近ファイナンス思考という言葉が流行っています。しかしファイナンスという言葉は実際にどのような意味があるのでしょうか。当記事で徹底解説します。
ファイナンスは知っておいて損はない
最近ファイナンス思考という言葉や本が流行しています。
ファイナンスという言葉はなんとなく財政や、金融の言葉だというイメージはありますが、どのような意味を持っているかまではイメージができない方も多いのではないでしょうか。
ファイナンスの奥深く専門的なところまでは知らなかったとしても、ビジネスマンとしてファイナンスの意味や簡単な内容までは知っていて損はありません。
そこで、当記事ではファイナンスについて今さら聞けない内容をわかりやすく解説していきます。
ファイナンスとは
「ファイナンス」の一般的な意味は、カテゴリーとしての“金融”です。
他に、“融資、資金調達”の意味でもよく使われます。あまり一般的ではないですが、“財源、資金、財政、財政学”との意味もあります。
ビジネスシーンでは、“資金調達”の意味で使われます。
役職名「CFO」のFは、ファイナンスを表しています。「CFO」は、Chief Financial Officerの略で、日本語で言うと「最高財務責任者」になり、企業の資金調達と運用を中心に財務・経理の最高責任者になります。
ファイナンスは英語では『finance』と書き、次のような意味をもっています。
【名詞】
- 財務
- 財源
- 財力
- 資金管理 など
【動詞】
- 融資する
- (~資金)を調達する
- 融通する など
そして、熟語ではこのように使われます。
- finance a anew company(新会社の資金を調達する)
- finace a program(計画に資金を提供する)
- finace administrator(財務管理者)
- job in finace(金融の仕事) など
ファイナンスの使い方・例文
ファイナンスの例文1
次に開発する商品を大量生産するには専用工場が必要になります。そのため、新工場を設立するためにファイナンスする必要があります。
ファイナンスの例文2
最近赤字続きだね。もっとしっかりファイナンスしなきゃいけないですね。
ファイナンスの例文3
最近、商品について消費者から同じようなクレームが相次いで寄せられていますね。
改良するための研究に必要なファイナンスをなんとか確保してほしい。
次にファイナンス・リースについてご説明します。
ファイナンスリースとは
ファイナンスリースとは何なのでしょうか。
例えば、オフィスのコピー機やパソコンのリースを思い浮かべてください。
リースが終わった後、返さず、そのまま使い続けていることがあると思います。
一応は「お金を払って借りた」という形をとっていますが、実態は分割払いで購入しているのと同じですよね。これが、ファイナンスリースなのです。
ファイナンスリースが実質的に分割払い購入と同じだとすると、あえて「借りる」という形式をとることのメリットは何でしょうか。
例えば、A社のパソコン100台をX社が購入し、Y社にリースに出すとします。
まず、もし、ファイナンスリースというしくみがなかったら、どうなるか想像してみましょう。
Y社が一括払いで購入できるキャッシュが用意できない場合、Y社がX社を介さずにA社から分割払い購入することは実際問題として非常に難しいです。
どういうことかというと、A社の立場に立ってみれば分かります。
A社は、もしY社に分割払いで売ってパソコンを引き渡してしまうと、後でY社が倒産したり代金を踏み倒したりするリスクを負うことになります。なので、ふつう、A社はそういうリスクを負ってまでY社に売りませんよね。
では、Y社が銀行等から借入をして一括購入するのはどうかというと、融資を受けるのは審査があったり担保を立てなければならなかったりとめんどうです。
そこで、金融の手段として有効なのが、ファイナンスリースです。
Y社がA社から直接購入するのではなく、間にリース業者のX社が入ったらどうなるか考えてみましょう。
X社がA社からパソコンを一括購入し、Y社に貸してお金をとるという形をとったらどうでしょうか。
ファイナンスリースを利用すれば、
- A社:パソコン100台が一度に売れて代金全額を回収できる
- X社:Y社からリース料を取ってもうかる
- Y社:一括払いで購入できないものを、実質分割払い購入できる
ということになります。
このように、ファイナンスリースというしくみによって、A社・X社・Y社いずれにもメリットを得られるのです。
ファイナンスリースと認められるには以下の2つの条件をみたす必要があります。
途中で解約できない(ノンキャンセラブル)
リース料の総額が、物件の価格以上(フルペイアウト)
まず、買ったのならば後で解約は基本的に認められません。
また、分割払い購入すると、代金総額は、一括払いよりも高くなります。
この2つの条件をいずれもみたすのがファイナンスリースです。そして、これらの条件をみたさない本来の意味での貸し借りのリースを、オペレーティングリースと言います。
最近では、法人の節税対策・決算対策として、オペレーティングリースのしくみを活用した節税法が活用されるようになってきています。
デットファイナンスとエクイティファイナンスとは
デットファイナンスとは?

デットファイナンスは、「借入金融」とも呼ばれ、銀行借入やシンジゲートローン、社債発行、私募債発行などによる資金調達のことをいいます。これは、企業会計では、負債(debt:デッド)としての資金調達であることから、貸借対照表(バランスシート)において、負債の部に記載されます。
一般にエクイティファイナンスが資本の増加を伴うのに対して、デットファイナンスは負債の増加を伴うところに大きな特徴があります。
デットファイナンスは、企業にとって最も一般的なファイナンス手法であり、主なポイントとして以下が挙げられます。
- 原則として、返済義務のある資金(負債)である
- 支払利息がコスト(費用)として発生する
- レバレッジ効果がある一方で、財務面の安全性に不安がある
- 支払利息は会計上、損金に算入されるため、その分課税対象額が低減される
エクイティファイナンスとは?
エクイティファイナンスとは、企業が株式を発行することにより、事業に必要な資金を調達することをいいます。エクイティ(株式資本)の増加をもたらす資金調達であるため、こう呼ばれています。エクイティファイナンスによって調達した資金は、バランスシート(貸借対照表)において資本の部に入ります。
具体的には、公募や私募による増資(普通株式発行)や転換社債型新株引受権付社債(CB)、優先株の発行などがこれにあたります。原則として返済期限の無い資金調達であり、設備投資などの資金需要が大きい成長企業が活用するのが有効とされます。一方、資家(株主)にとっては、一株あたりの価値の希薄化が起こり、不利益を被る可能性があるため、エクイティファイナンスを実施する企業には株主への説明が求められます。
一方で、債券の発行や銀行借入など、将来償還や返済の義務を負う形の資金調達をデットファイナンスと呼び、これにより調達した資金はバランスシートの負債の部に入ります。
書籍ファイナンス思考からご紹介

日本からアマゾンのように大きくスケール(成長)する企業が輩出されないのはなぜか。なぜバブル崩壊以降、先進的な技術や勤勉な人材を抱えているはずの日本企業が、総じて停滞してしまっているのか。どうすれば、日本から真に社会的インパクトを発揮する企業や新産業を創出することができるのか。
こうした問題意識を出発点に執筆したのが書籍ファイナンス思考(参考文献:ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論 著:朝倉 祐介)です。
日本が低成長を続ける理由のひとつ、それが「PL脳」だと朝倉さんは指摘します。「PL脳」とは、目先の売上や利益を最大化することを目的視する、短絡的な思考態度のことです。
「売上や利益を引き上げることこそが経営の目的」という主張は、一見するとそれらしく思える考え方かもしれません。ですが、目先の損益計算書(PL)の数値の改善に汲々としすぎるあまり、大きな構想を描きリスクをとって投資するという積極的な姿勢を欠き、結果として成長に向けた道筋を描くことができていないのが、現在の日本企業ではないでしょうか」
経営者から投資家、従業員やメディアなど、あらゆるところにおいて「PL脳」に陥ってしまっていることが原因で思い切った一手を打つことができず、縮小型の衰退サイクルが続いていると朝倉さんは考えています。
PLは作ることができます。やりすぎるとそれは粉飾決算になりますが、法に触れない範囲でも調整することができるのです。
例えば売上が計上されるタイミングに時間差があるような事業の場合、物販業のように出荷した時点で計上される「出荷基準」と、製造業のように検収した時点で計上される「検収基準」などがありますが、これを悪用して通常よりも多めに納品するなどして見せかけの売上を作ることは可能です。
黒字事業の売却は、そこだけを見るとなぜ利益を創出しているのに売却するのかという風になると思います。ただ長期的な視点で会社の企業価値を最大化する観点で見ると、その事業が会社にとって必須ではない場合は、高く評価してくれている時に事業を売却した方が売り手にとっても買い手にとっても良いはずです。
ところがPL脳の場合は、会社の企業価値を最大化するよりも、今期のPLを良くするというアプローチで考えてしまうため、黒字であるがゆえに少しでもPLを良くしようとずっと保有し続けてしまいます。
価値が目減りしていくと今度は売却したくてもそれが難しくなってしまい、そのまま負債になってしまうことがあるのです。こうした状況を避けるためには、将来的な会社の企業価値を伸ばすためにはどうするか?という視点で考え意思決定することが重要です。
PL脳が抱える問題についてはわかりましたが、これに対してどうアプローチすれば良いのでしょうか?
それが「ファイナンス思考」です。
ファイナンス思考とは、「会社の企業価値を最大化するために、長期的な目線に立って事業や財務に関する戦略を総合的に組み立てる考え方」のことです。 「会社の戦略の組み立て方」とも言えます。
ファイナンスの資格まとめ
経理・財務部門は会社の中でも専門性が高い部署の一つです。
仕訳だの勘定科目だの税区分だのそれまでは聞きもしなかった専門用語に囲まれて仕事をすることになります。とっつきにくさはありますよね。
ただしこのような専門性はプラスにも働きます。
専門用語だらけですがこれは会社が違っても共通の考え方のものが多く、勉強して身に着ければ会社の方針に左右されない自分自身の「武器」になります。
そのような自己研鑽のきっかけになるような、経理・財務系資格についてご紹介したいと思います。
- 経理・財務部門の王道資格「日商簿記検定」 https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/
- ファイナンシャル・プランナー https://www.jafp.or.jp/aim/
- 経理・財務担当として市場ニーズの高い IFRS 検定 https://www.ifrs-kentei.com/
- 近年経理・財務担当の中でも地名度が上がって来ている FASS 検定 http://www.cfo.jp/fass/fass_exam/
- ビジネス会計検定 https://www.b-accounting.jp/
色々な資格をご紹介してきましたが、どうやって取得するのでしょうか?
一般的には簿記1級、FP1級等一部の難関資格にグルーピングされるものを除けば、このような経理・財務系の資格は独学で取得することはそこまで難しくありません。
主要な予備校系列の出版社が販売しているテキスト・問題集をやってみて、必要に応じて模試等を受験すれば十分です。
まとめ
ファイナンスについて、詳しくご紹介してきました。
当記事をご参考にしていただければファイナンスについて聞かれてもすぐに答えられるようになっているでしょう。