会社設立

会社設立時に税理士は必要?依頼のタイミングや費用の相場を確認しよう

会社設立時に税理士は必要?依頼のタイミングや費用の相場を確認しよう

会社設立を決めた後、「税理士は依頼した方が良いの?」とお悩みですね。たしかに、税理士は会社設立・運営において頼りになる存在です。

しかし、どの時点で依頼することがベストなのか、顧問税理士をつけるべきかは、それぞれの会社の事情によって言い切ることはできません。

そこで今回は、税理士に依頼するタイミングごとにメリット・デメリットを分かりやすく解説いたします。顧問弁護士をつける判断ポイントも紹介しているので、参考にしてください。

税理士の役割をしっかり認識し、適切なタイミングで専門家の力を借りましょう。

会社設立前?後?税理士を雇う2つのタイミングとは

会社設立に向けて、税理士を雇うべきかお悩みではありませんか?たしかに、税理士は会社を経営していく上で頼りになる存在です。

しかし、必ずしも会社設立と同時に税理士を雇い、顧問税理士をつける必要はありません。

会社が税理士を雇うタイミングとしては、以下の2つのタイミングが考えられます。

  • 会社設立時
  • 会社設立の1年後

どのようなタイミングなのか、確認していきましょう。

(1)会社設立時

会社設立時に依頼をすれば、設立に向けてのアドバイスやサポートを受けられます。

税理士の専門は税に関することなので、経費の使い方や節税方法について会社設立時からアドバイスを受けることが可能です。また、税務署・都道府県税事務所・市町村区役所への会社設立の届出のサポートも受けられるでしょう。

会社設立時から税務対策をしておくことで、本来の業務に専念できます。

(2)会社設立の1年後

会社設立後、初めての決算期を迎えるタイミングで税理士に依頼する会社は多いです。

この場合、決算書の作成や確定申告の代理を依頼することになります。契約内容によっては、会社の売り上げ状況や経費の割合の分析や財務改善・節税対策のアドバイスを受けることも可能です。

決算期が近づくタイミングで毎年税理士に依頼する会社もあれば、1回目の決算期のあと継続的に顧問税理士として契約を交わす会社もあります。

このように、会社設立時や会社設立後の決算期など、会社によって税理士に業務を依頼するタイミングはさまざまです。

どちらのタイミングで税理士に依頼すべきか悩むのであれば、まずはそれぞれのメリット・デメリットを確認していきましょう。

会社設立時に税理士に依頼するメリット・デメリット

まずは、会社設立のタイミングで税理士に依頼する場合を見ていきましょう。

会社設立時に税理士に依頼する3つのメリット

会社設立時に税理士に依頼するメリットは、以下の3つです。

  • 会社登記手続きのアドバイス・サポートをしてもらえる
  • 税務関係書類の届出をしてもらえる
  • 決算時期のアドバイスをしてもらえる

(1)会社登記手続きのアドバイス・サポートをしてもらえる

会社設立に強い税理士であれば、登記申請や定款認証のアドバイス・サポートをしてもらえます。

必要書類や申請書類の書き方について教えてもらえるでしょう。ただし、登記申請の代行は、司法書士にしかできないことです。

そのため、司法書士と連携している場合にのみ、代行を請け負ってもらえます。

このとき、顧問税理士の契約を前提として、格安で請け負ってもらえる可能性が高いです。

(2)税務関係書類の届出をしてもらえる

会社設立後は、税務署や地方の税金事務所などに届出を出さなければなりません。

法人設立届出だけでも添付書類がたくさんあり、面倒に感じるでしょう。しかし、税の特例を受けるために、以下のような書類が必要になるケースもあります。

  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 法人の設立届出書
  • 青色申告の承認申告書
  • 棚卸資産の評価方法の届出書
  • 減価償却資産の償却方法の届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • 消費税新設法人に該当する旨の届出書

これらはすべて、税理士が代理で提出できる書類です。慣れない人が届出の必要・不必要を判断したり、届出書を作成するには膨大な時間と労力がかかります。

もちろん、会社設立直後は税務関係以外にもさまざまな手続きをしなければなりません。さらに、事業運営もしていかなくては売り上げがない状態が続きます。

税理士に依頼すれば、期限内に代理で提出してもらえるので安心です。

(3)決算期のアドバイスをしてもらえる

税務観点から、決算期をいつにすべきかをアドバイスしてもらえます。

会社の決算期は、設立時に自由に決めることが可能です。とくに、決算期によって消費税の課税事業者となる時期を1年ずらすことができます。

繁忙期を避けたり売り上げ予測ができるタイミングにしたり、決算期を決める要素はたくさんあります。

税理士の的確なアドバイスを受けた上で決算期を決めると、節税対策が可能です。

会社設立時に税理士に依頼するデメリット

会社設立時に税理士に依頼するデメリットは、一定の費用がかかることです。

会社設立の代行やサポートを依頼するのであれば、一般的に以下のような費用がかかるでしょう。

税理士への報酬 0〜5万円
司法書士への報酬 2万円〜5万円

株式会社の設立の手続きを自分で行ったとしても、定款認証や登録免許税などに20万円〜25万円程度かかります。ほかにも、事務所や店舗の契約や備品の購入など、事業に向けての出費は大きいです。

初月の売り上げの見込みがそれほどないのであれば、税理士にかかる費用に対してメリットは感じにくいかもしれません。

ただし、税理士によっては懐事情を理解して、割安な価格とサービスのバランスを提案してくれるところもあります。

会社設立後1年で税理士に依頼するメリット・デメリット

会社設立後1年で税理士に依頼するメリット・デメリットを確認していきましょう。

会社設立後1年に税理士に依頼する2つのメリット

会社設立後1年に税理士に依頼するメリットは、以下の2つです。

  • 決算に必要な書類を作成してもらえる
  • 税務調査で立ち会ってもらえる

(1)決算に必要な書類を作成してもらえる

会社の決算で書類を作成してもらったり、確定申告の代理を依頼することが可能です。

会社設立1年後あたりになると、決算期を迎えることになります。税理士の協力なしで法人税や消費税の確定申告をすることは、難しいです。

というのも、個人の確定申告よりも多くの書類を作成しなければならず、税金の計算も複雑であるためです。

税務の知識を持っていない経営者が法人税や法人地方税の申告書を作成することは、かなりの時間と労力がかかります。税理士に頼めば、期限内に正しい申告書を作成してもらえます。

会社設立時に税理士を雇っていなかったとしても、決算期が近づくタイミングで依頼することが適切と言えるでしょう。

(2)税務調査で立ち会ってもらえる

万が一、確定申告の後日に税務調査があった場合でも、決算申告を税理士に依頼していれば立ち会ってもらえます。

申告書には、担当税理士の名前や事務所情報を載せることが可能です。もし、税務署で疑問点が出てきた場合、まずは担当税理士に連絡が入ります。

電話で確認のできることであれば、現地での税務調査を免れられるでしょう。

間違った申告をしていなかったとしても、事業の売り上げに大幅な変動があったり、事業規模の大きな会社であれば、税務調査の対象になる可能性があります。

不正がなくても、税務調査と聞くだけで「どんなことを聞かれるんだろう」と不安になるものです。しかし、税理士が立ち会ってくれれば、調査職員の受け答えをお願いできます。

なにより税務の専門家が立ち会ってくれるだけでも、安心できるはずです。

会社設立後1年に税理士に依頼する2つのデメリット

決算期が近づいてきた会社設立後1年で税理士に業務を依頼するデメリットもあります。

  • 日頃の節税対策ができない
  • 経営以外の仕事をしなければならない

2つのデメリットについて、詳しく確認していきましょう。

(1)日頃の節税対策ができない

決算期を目前に税理士に依頼をすると、日頃から節税対策ができません。

なぜなら、日にちを遡って節税対策をすることは難しいからです。

たとえば、「役員報酬をあと2万円増やしていたら税率が大きく変わった」ということが発覚しても、後から修正することはできません。

また、出張旅費規定を設けておいたり、小規模企業共済に加盟しておくなど、事前に知っていれば大きな節税効果を感じられる対策もあります。

少しでも節税をしたいのであれば、会社設立時に依頼する方が良いでしょう。

(2)経営以外の仕事をしなければならない

会計・税務に詳しい従業員や役員がいなければ、経営以外の仕事も経営者が行わなければなりません。会社設立時は、軌道に乗るまで時間がかかることも大いにありえます。

テナント探しや従業員の採用、顧客獲得、WEBサイト・SNSの立ち上げなど、やらなければならないことがたくさんあります。

そんな中、会計帳簿の打ち込みやキャッシュフローの確認、源泉徴収の計算などを1人で行うことは大変です。さらに作った帳簿が正しいかのチェックやアドバイスを毎月してくれる人がいないと不安に感じるでしょう。

日頃から頼れる税理士がいれば、事業に集中できるはずです。本業に集中したい経営者は、専門知識を持っている税理士を頼りましょう。

税理士と顧問契約をするべき判断する2つのポイント

「会社を設立したら税理士と顧問契約をしなければならないもの」と思い込んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

大きくわけて、税理士との契約には2つの形があります。

  • 毎月の顧問料を払う代わりに、定期的な指導やアドバイスをもらえる顧問契約
  • 決算などの単発の案件のみ依頼するスポット契約

ここまで読むと、「会社設立時に依頼をすると税理士の顧問契約をしないといけないの?」と思うかもしれません。たしかに、会社を経営していく中で顧問税理士がいれば心強いです。

しかし、必ずしも顧問税理士の契約をしなければならないわけではありません。

以下のような2つのポイントを確認すれば、顧問税理士と契約をすべきか判断できます。

  • 会計・税務の知識を持った従業員がいるか
  • 1年間の事業売り上げが1,000万円を超えているか

それぞれ詳しく確認していきましょう。

(1)会計・税務の知識を持った従業員がいるか

会計・税務の知識を持った従業員がいれば、日々の記帳や収支計算は任せられます。

そのため、日々の経理フローにおいて顧問税理士は必要ないでしょう。

ただし、正しく経理処理がされているかの第三者チェックを依頼するため、税理士と顧問契約をしている会社は多いです。

必要であれば、次年度に向けての節税対策や財務状況分析を依頼するのも良いでしょう。

(2)1年間の事業売り上げが1,000万円を超えているか

事業売り上げが年間1,000万円を超えてくると、業務が膨大になるので顧問税理士がいた方が良いです。

というのも、年間の売り上げ1,000万円を超えると消費税の課税事業者となります。

消費税の確定申告も必要になるため、より作業の量が多くなってしまいます。知識の持つ従業員でも、処理できないことが出てくるかもしれません。

売り上げが大きいと節税のメリットも大きいので、お金を払って税理士を雇う意義を見出せるはずです。

違法になる可能性大!会社登記の代行は司法書士にしかできない

税理士は、会社登記に関する代行を請け負うことができません。

なぜなら、登記手続きを代理で行うには、司法書士の資格が必要だからです。

もちろん、会社経営者や担当の従業員が申請することは認められています。しかし、業務として請け負うことができるのは司法書士のみです。

これは、司法書士法第73条に明記されています。

(非司法書士等の取締り)

第73条 司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行つてはならない。

引用:司法書士法|法令リード

上記に書かれている「第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務」の中に、登記も含まれます。

行政書士には会社設立の手続きをお願いできない?

行政書士には、定款作成業務を依頼することができます。しかし、登記申請書を作成したり、法務局へ申請したりすることはできません。

本人が申請した形で申請書を作成、申請としても司法書士違反となります。

2017年に司法書士資格のない行政書士が登記申請を行ったとして、司法書士法違反で逮捕されたことがあります。

このように、司法書士の資格がないのに登記申請を請け負うことは法律で禁止されています。当然、税理士が代理で行うことも司法書士違反です。

税理士が「全部代行できる」と言った場合、司法書士が実務を行うことになります。念のため、どこの司法書士が代行するのか確認しておきましょう。

税理士に依頼するときの費用相場とは?

税理士に依頼しようと決めるにも、どれくらいの費用がかかるのか気になりますよね。

そこで、以下の2つの場合に分けて費用相場を確認していきましょう。

  • 顧問税理士の費用相場
  • 決算申告代理の費用相場

顧問税理士の費用相場

中小企業の顧問税理士の費用相場は、月々1万円〜3万円程度です。年商1億円を超えると月々5万円以上発生します。

顧問税理士には、記帳チェックや日々の税務相談、節税対策をお願いすることが可能です。

決算申告代理には別で費用が発生しますが、顧問税理士の契約があれば比較的割安で請け負ってもらえます。

決算申告代理には、月々の顧問料×4ヶ月〜6ヶ月程度かかると考えておきましょう。

決算申告代理の費用相場

決算申告代理の費用相場は、年間の売り上げによって変わります。

年間売り上げ 費用相場
500万円以下 10万円程度
1,000万円以下 15万円程度
3,000万円以下 20万円程度
5,000万円以下 25万円程度
1億円以下 35万円程度

依頼できる主なサービスは、以下の通りです。

  • 記帳内容のチェック
  • 申告書の作成
  • 質疑応答

記帳もまとめてお願いするのであれば、最低でも5万円〜10万円程度上乗せになると考えておきましょう。

会社設立に不安があるのなら一度税理士に相談しよう

会社設立に不安があるのであれば、税理士に相談してみましょう。税務の観点から会社設立に向けたアドバイスや面倒な税務関係の届出の代理をしてもらえます。

ただし、会社設立で必要な電子定款や登記申請は税理士の仕事ではないため、注意しましょう。とはいえ、司法書士や行政書士などの他の士業との繋がりを持っている税理士事務所はたくさんありません。

税理士法人きわみ事務所でも、他の士業との連携を図って会社設立のサポートをしております。不安のある方は、一度お気軽にご相談ください。

おわりに

会社設立時や決算のタイミングでは、税理士に業務を依頼するとメリットが大きいです。

顧問税理士の契約をすべきか悩む経営者は多いですが、以下のポイントを基準に判断することをおすすめします。

  • 会計・税務の知識を持った従業員の有無
  • 1年間の事業売り上げが1,000万円を超えているか

顧問税理士がいると税務関係を任せられるので、経営者は本業に集中して事業を成長させることができます。一人で設立した会社であれば、その恩恵は大きいでしょう。

税理士法人きわみ事務所では、会社設立やスタートアップ企業の税務をサポートしております。とくに会社設立時には、他の士業と連携を行ってワンストップでサービスをご提供いたします。

「気軽に相談できる専門家がいて欲しい!」とお考えの方は、一度税理士法人きわみ事務所へご相談ください。経営者や従業員のみなさまが本業に集中できるよう、十分なサポートをいたします。

企業の教科書
金子 武弘
記事の監修者 金子 武弘
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
日本一周中に税理士合格を果たすなど、アクティブでフランクに頼りやすいところがポイント。
徹底した経営者目線を大切に、なんでも対応ができるオールラウンダーな税理士を目指す。

タイトルとURLをコピーしました