開業するといっても、個人事業主として開業する方法と、法人として開業する方法の2つがあります。どちらも開業には変わりませんが、違いはなんでしょうか?
今回は、個人事業主として開業する場合と法人として開業する場合の違いのほか、社会保険制度の違い、個人事業主と法人のメリット、中小企業庁が考えている創業支援のポイントなどについて詳しく解説していきます。
開業するならどっち?個人事業主と法人の違い
開業という目標を達成したいだけならば、個人事業主として開業しても、法人として開業しても、あまり大きな違いはありません。
しかし、開業して最終的に事業規模を大きくしたいという目標がある場合は、個人事業主として開業するか、法人として開業するかには大きな違いがあります。
それぞれにどのような違いがあるのか詳しく見ていきましょう。
何を優先するかで異なる
個人事業主として開業する場合には、開業届を出すだけで簡単に開業できるため、コストや手間を省きたい場合には個人事業主が最適と言えます。
法人として開業する場合には、法人登記が必要になるため、コストや手間がかかるというデメリットはあります。ただ、税金面では個人事業主より優遇されているため、事業規模が大きく節税効果を高めたい場合には法人が最適と言えます。
社会保険制度の違い
個人事業主として開業する場合と法人として開業する場合は社会保険制度が大きく異なります。
個人事業主と法人の社会保険制度は何が違うのでしょうか?社会保険制度の違いについて見ていきましょう。
個人事業主の社会保険制度
個人事業主の場合は、市区町村の国民健康保険と国民年金に加入します。国民健康保険と国民年金は、両方とも全額自己負担になります。
また、配偶者の国民健康保険と国民年金の保険料も負担しなければならないなど、全体の負担感が大きくなるので注意が必要です。
法人の社会保険制度
法人の場合は、健康保険組合・全国健康保険協会の運営する健康保険と厚生年金に加入します。健康保険と厚生年金は、会社と従業員で半分ずつ負担します。
また、配偶者の健康保険と厚生年金の保険料は負担する必要がないので、全体的な費用を抑えることができるでしょう。
それぞれのメリット

個人事業主と法人、開業するにはそれぞれどんなメリットがあるのでしょうか?
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
個人事業主のメリット
個人事業主のメリットとして挙げられるのは以下の通りです。
- 開業や設立、廃止の手続きが簡単
- 会計や経理が簡単
- 社会保険が個人負担で済む
個人事業主として開業・設立する際は開業届を出すだけなので、実質0円で簡単に開業・設立できます。また、一度開業・設立した後に廃業する際も、届出を出すだけなので簡単です。
会計・経理の面では、個人の確定申告で済むため手続きが簡単です。従業員が5人未満の場合には、社会保険が従業員負担になり、会社の負担がないのもメリットと言えるでしょう。
法人のメリット
法人のメリットとして挙げられるのは以下の通りです。
- 経費に認められる範囲が広い
- 赤字の繰り越し期間が長い(9年)
- 信頼度が高い
幅広い費用が経費に認められるほか、赤字の繰り越し期間が長いなど、節税効果が高いと言えます。
また、融資を受ける、取引を行う場合には、きちんとした手続きを行って設立される法人の方が個人事業主よりも信頼度が高く、スムーズに融資を受けたり取引につながったりしやすいのがメリットと言えます。
中小企業庁が考える創業支援のポイントとは?
個人事業主として開業する場合と法人として開業する場合の違いやメリットなどについて解説してきました。しかし、開業はリスクを伴うこともあり、開業数はあまり多くありません。
少しでも個人が開業しやすいように中小企業庁が行っている創業支援の取り組みについて見ていきましょう。
雇用は新規開業が創出
中小企業庁が発表したデータによると、雇用の約6割は新規開業した事業によってもたらされていると言われています。
そのおかげで日本は高い雇用率を維持してきていましたが、長期的な開業率は年々低下してきているため、このままでは雇用率が低くなる可能性があります。
そこで、中小企業庁は高い雇用率を維持するため、少しでも開業しやすい環境を整えるべく、創業支援を行うようになりました。
会社の成長段階に合わせた支援
開業率が低下したと言っても、開業希望者数は減っておらず、むしろ年々増加しています。
そこで、中小企業庁は少しでも個人が開業しやすいように、創業準備期~創業期~創業直後期~成長期~安定期(成熟期)と、成長段階に合わせて支援を行い始めました。個人が開業しやすい環境が整い始めていると言えるでしょう。
まとめ
開業するには、個人事業主か、法人として開業するという2つの方法があります。しかし、社会保険料や経理などに焦点をあてると、それぞれメリットとデメリットがあるため、違いをよく把握してから開業することが重要です。
開業はリスクを伴うなどの理由から開業率が年々低下していますが、中小企業庁が少しでも開業しやすいように創業支援を行っているため、活用してみるのも選択の1つと言えるでしょう。
個人事業主か法人化するか悩んだときには、一度専門家に相談してみるのもお勧めです。
助成金や補助金についてだけではなく、専門家として多角的な面からアドバイスしてもらうことにより、思わぬ道が見えてくるかもしれません。
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