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会社設立が無効になる?会社設立で気を付けたいケースを徹底解説!

会社設立が無効になる?会社設立で気を付けたいケースを徹底解説!

起業をする場合、日常生活では経験することのない手続きが多くあります。そしてその方法もひとつではなく、例えば創業者だけが集まって会社を立ち上げる方法(発起設立)や投資家を募集した上で立ち上げる方法(募集設立)があり、また会社運営にあたりどのようなルールを設けるのか(定款の作成)、出資はどのようにして受けるのか、といった違いによっても必要な手続きは違ってきます。慣れないことも多いかと思いますが、この手続きに不備があるといったん会社を成立させていてもその後無効になるというリスクを負ってしまいます。 ここでは会社設立の無効とは何か、また具体的にどのようなケースで無効になってしまうのか解説していきます。

会社設立の手続きに不備があると会社がなくなる?

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株式会社の設立段階では、主に定款の作成、機関の具備、出資、登記などを行います。定款とは会社にとって根本的な規則を意味するものであり、機関は取締役などのことを指します。 この過程では様々な手続きが必要になりますが、明らかなミスがある場合、その書類等の提出先でミスを修正できる機会が与えられることもあります。しかしこのミスが見過ごされてしまった場合や、その時点で手続きの不備に気がつかないことなどもあり得ます。不正の意図で不備を隠している人も世の中にはいることでしょう。この場合、会社の設立が無効になってしまうことがあるのです。 また「会社の設立無効」以外にも会社の存在がなくなるケースがあり、それらは「会社の不存在」「会社の不成立」などと呼ばれます。それぞれ無効事由の場合とは不備の内容が異なりますので、まずはこれらがどんな意味なのか把握しましょう。

会社設立の無効

会社の設立無効が問題となるケースでは、ここまででも紹介した通り、会社はいったん有効に成立しています。しかし設立手続きに不備が見つかることで、やっぱりこれを無効にすることを意味します。一度は有効に成立しているため、無効になるまでの間、ほかの会社と同じように企業活動を行い他者と取引をしていることも考えられます。そこで無効にするといっても利害関係人とのバランスが考慮されます。

会社の不存在

会社の不存在とは、そもそも設立の手続きを経ていない会社の状態を意味します。設立登記をしていない、もしくは登記だけがされている状態で設立手続きをまったくしていないなどの状態です。この場合には設立手続きにおけるミスの程度が大きいとして不存在の扱いを受けます。

会社の不成立

会社の不成立は設立手続を途中で断念し、設立登記にまで至らなかった場合を言います。会社の不存在は手続きがないにもかかわらず活動している会社に対して呼ばれますが、こちらは手続きをしようとしたものの成立させられなかった場合を指して呼ぶことが多いです。この場合、途中まで手続きが進んでいますので費用を支出していることが考えられます。出資を受けている場合もあるでしょう。起業をしようと企画した創業者(発起人)は、このときの責任を負わなければなりません。会社の立ち上げ時に出資を受けた分を返還するなどの義務を負うことになるでしょう。

会社設立無効の訴えとは?

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会社の設立無効について詳しく見ていきましょう。無効となる原因があったとしてもそのことにつき訴えを提起されなければ会社は存続されます。起業をする側としても設立無効の訴えがどのような要件で提起されるのか知っておくことが大切です。

会社設立無効の要件

まずこの訴えの提起をするには、客観的に手続上の瑕疵(ミス)が存在している必要があります。設立に関して発起人に思い違いがあった場合でもそれは他の者に認識することはできず、客観性があるとは言えません。一方定款や登記の内容に不備がある場合には他人が見て適法かどうかの判断ができ、客観性のある瑕疵と言えます。

ただしこのような客観性のある瑕疵があったとしても、起業者はいつまでも設立無効のリスクを負うわけではありません。長く企業活動を続けることで利害関係者も増えてしまうため公益性の観点からしても無効の訴えに制限をかける必要があるのです。そこで、この会社の設立無効の訴えは2年以内に提起しなければ、それ以後提起はできないというのが原則とされています。提訴期間は瑕疵があった日や瑕疵に気がついた日ではなく、「成立の日から2年以内」ということは覚えておきましょう。

さらに訴えを提起できる人物にも制限があり、株主・取締役・監査役・清算人に限られます。ここで取締役は、起業者本人であることや身内であることが多いため最も問題となるのは株主からの提起でしょう。株主同様、会社債権者も当該会社と大きな関係性があると言えますが、この無効設立の訴えを提起できる権利はありませんので債権者から訴えられる心配はありません。

会社設立の無効は将来に向かって効力がある

会社の設立無効は上でも説明したように、無効となることで多くの関係者にも損害が生じるおそれがあり、その効力は限定的である必要があります。そのため提訴期間や提訴権者(訴える権利・資格を持つ者。ここでは株主や取締役など。)が限られています。

さらに重要なのは設立無効の訴えに係る請求を認める判決が確定したとしても「将来に向かってのみ」効力が発揮されるということです。遡及効がないという言い方をします。つまりは過去の取引などがなかったことにはならないという意味です。設立手続きに不備があるため会社そのものが最初からなかったものとして扱われてしまうと、それまでに関係を持っていた者も道ずれで損害を被る可能性があるためこのような規定が設けられています。

このことは起業者にとって良くも悪くも働きます。例えば発起人に任務懈怠(発起人としての仕事を全うせずサボること)があるとそのことにつき責任を負わなくてはならず、設立が無効となったとしてもその確定は訴え以後に効果が発揮されるため、任務懈怠がなかったことにはならないのです。

会社設立が無効になるケース

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それでは起業者が最も注意しなければならないポイントを解説していきます。会社の設立が無効になるのはどのようなケースなのかということです。 一般的には設立手続きの重大な法令違反が無効になり得るケースであるとされています。ただし法律上の違反があったからといって必ずしも無効になるわけではありません。 無効と認められるのは「設立の手続き中に株主の信頼を失わせる重大な瑕疵があり、そのことが設立後の会社の経営に重大な支障をきたす可能性があるとみられる場合」と考えられています。 いずれにしても十分に気を付けて手続きを進め、また専門家の力を借りることで避けられることです。以下で具体例を見ていきましょう。

会社設立で気を付けるポイント1.定款の記載事項

定款は会社の根本原則です。そのため定款に重大な瑕疵があるということは設立の無効の原因になり得ます。定款にも色んな項目がありますが、設立無効に関係してくるのは「絶対的記載事項」についてです。これは必ず不備のないよう記載する必要があります。絶対的記載事項とは、会社についての取り決めの中でも最も基礎的な内容であり、会社設立ではここの記載が最も重要な手続きの一つとなります。ただしこの記載内容自体は単純で特に難しいことは何もありません。会社の「目的」「商号」「本店の所在地」といった情報を間違いのないよう記載するだけです。

会社設立で気を付けるポイント2.定款の調査

定款には「変態設立事項」と呼ばれるものもあります。これは現物出資(会社への投資を金銭ではなく不動産や車などで行うこと)や設立費用などを決定した場合には必ず記載が必要になる事項で、その事項につき他の株主との不平等などが生じないように調査を行う場合があります。例えば100万円の価値があるとして現物出資されたものに対し本当にその価値があるのかどうか、といったことを調べるのです。そしてこの調査が必要であるにもかかわらずしていない場合には設立無効になる可能性が出てきます。

会社設立で気を付けるポイント3.定款の認証

定款は設立時に作成し、その後公証人の認証が必要とされています。認証自体はすぐに手続きが終わりますが手数料に数万円が必要になります。そしてこれを済ましていなければ会社設立が無効になる原因となります。

会社設立で気を付けるポイント4.発起人の同意

会社設立時、株式発行に関する事項の決定につき発起人全員の同意が求められます。例えば発起人が、出資者に対しそれぞれどれほどの株式数を割当てるのか、といった取り決めは発起人同士で納得を得る必要があるのです。

発起人はただ起業の企画をするだけでなく、設立時発行株式を1株以上引き受けなければなりません。複数の発起人がいる場合にはそれぞれが1株以上の引き受けをする必要があります。しかしこの発起人が出資を履行しない(例えば金銭の払い込みをしないとか)などの理由により将来株主になる権利を失う(失権)ことがあり、こうして発起人が株を引き受けなければ設立が無効になり得るとされています。

会社設立で気を付けるポイント5.創立総会の未招集

株式会社の設立方法には「発起設立」と「募集設立」があります。 発起人だけで設立する方法を発起設立、広く出資を募る場合を募集設立と呼びます。そして募集設立をする場合には、その設立手続きの過程で創立総会というものを開かなければなりません。これは会社設立後の株主総会のようなもので、出資者が集まる話し合いの場となります。ここで設立に関する取り決めなどを行います。しかしこの創立総会の招集をかけていない場合にも、会社設立は無効だという主張を受ける原因になると考えられています。また、招集をかけたとしてもその開催が適法なものでなければやはり無効になり得ます。

会社設立で気を付けるポイント6.創立総会の議事録に不正

創立総会の招集をかけ、そして適法に開催され、さらにそのやり取りのなかでも違法な行いがなかったとしても、設立に関する報告や役員の選任、定款の承認など、非常に重要なことが話し合われるため、その内容が「議事録」として確かに記録されていなければなりません。総会そのものが適法だとしてもこの議事録が正しくなければいけないのです。

会社設立が無効になった場合の責任問題

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会社設立の手続きに瑕疵がある場合など、その任務を怠ったとみられる場合、発起人は当該株式会社または第三者に対して損害の賠償をする責任を負います。そしてそのときの発起人および取締役または監査役(厳密には「設立時取締役」や「設立時監査役」などと呼ぶ)などは、損害賠償について連帯で責任を負うとされています。

なお、株式会社に対する損害である場合には、総株主の許しを得ることができれば無事免除されます。しかし第三者に対して生じた損害賠償の責任は、当然この総株主の免責の同意があったとしても逃れることができません。

このほか発起人は出資額の補てんをする義務が生じることや、会社不成立になった場合の費用の負担など、大きな責任を伴うため、不備がないようにしっかりと設立手続きを進めなければなりません。

会社設立で不安なら税理士に相談を!

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会社の設立手続きを経ずに企業活動を行った場合、その会社は不存在であるとして誰からでもその不存在であることを訴えらえる可能性があります。手続き中のトラブル等により適法に成立に至らなかった場合でも会社不成立を主張される可能性があります。

一方で会社の設立無効とは、株主など一部の者のみが主張でき、さらに成立のときから2年間だけという期間限定で訴えの提起が許されています。主に定款の作成や発起人の職務、創立総会における重大な瑕疵などが無効事由になると考えられています。このまま会社を存続することに問題があるとみられ、その手続きにおける瑕疵が重大である、ということが要件の一般論です。様々なケースで当てはまりそうではありますが、最終的には裁判官の判断にゆだねられます。そのためすべての事例において白黒はっきり無効かどうか判断できるものではないということは覚えておきましょう。

そして起業者は、このように設立から2年は株主等から無効の訴えを起こされるリスクがあることを念頭に適法な設立手続きをするよう配慮しましょう。不安な方は税理士に相談することをおすすめします。

企業の教科書
高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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