法人設立するための必要書類は、設立する会社のタイプで微妙に変わってきます。株式会社でも発起設立、募集設立、取締役会設置、取締役会非設置、または一人株式会社などで微妙に変わってきます。
また合同会社でも一人で設立する場合、二人以上で設立する場合で書類がかわります。よくチェックして抜け漏れをチェックすることが必要です。 まずは細かな定款の作りからみていきます。
法人設立にはまず会社定款作りが不可欠

会社を設立するには、なにより会社定款を作成することが必要です。
株式会社では公証人役場での定款認証が必要です。合同会社は定款ができると直接法務局に申請します。定款ができないことには何も進まないのです。
定款は、簡単に言うと会社内で作ったルールブックです。 定款を埋めていく間に会社の基本的内容が固まっていきます。 一度、決定すると簡単には崩せません。 間違い、抜け漏れがないようにしっかりチェックしながら作成していきましょう。
定款に必要な3つの記載事項とは?

会社定款には3種類の記載事項があります。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
絶対的記載事項
絶対的記載事項は定款に必ず記載しなければならない事項です。 一つでも抜けているとその定款は無効になるので、必ず抜けや間違いのないようにしましょう。
絶対的記載事項に必要な項目
①商号 ②事業目的 ③本店所在地 ④設立に際して出資される財産の価格またはその最低額 ⑤発起人または社員の氏名、または名称住所 ⑥社員全員が有限責任である旨 絶対的記載事項に準じるもの ⑦発行可能株式総数
このうち⑦は合同会社は株を発行しないため不用です。
相対的記載事項
相対的記載事項とは、定款に定めないと効力が生じない項目です。株式の譲渡制限や役員任期の伸長などを定款に記載がなければ効力はありません。 記載を忘れたり漏れていた場合は項目については効力がないので、どのような項目が必要なのか事前に確認し、間違いない記載が必要です。
相対的記載事項の定款に記載する項目
- 現物出資に関する記載
- 現物出資する者の氏名
- 現物出資の価格
- 現物出資に割り当てる設立時発行株式数
- 株式の譲渡制限に関する定め 例・株式の譲渡により取得するためには株主総会の承認など
- 株式発行の定め 例・発行する株式には株券を発行する
- 役員任期の伸長 例・規定の任期より伸ばす場合の任期
任意的記載事項
任意的記載事項は、記載がなくても定款が無効にもならず、定款に記載されてなくても項目が否定されるわけではない項目です。 つまり記載してもしなくてもいい項目ですが、会社の記載ルールとしてあえて記載しておきたい項目です。
通常の会社は、総会の議長になる者、取締役・監査役の人数などの項目を記載します。 任意とはいえ、定款に一度記載すると変更する際には変更登記申請をする必要があります。その分、記載した項目の重みが増します。
定款の構成

定款の記載順序が一定のルールがあります。 会社にとって重要項目から書いていきます。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
の順番です。
会社の基本項目から、会社の所有者である株主に関する項目、役員に関する項目、任意的記載事項を中心にした細かな項目に移っていきます。
第1章は総則として、商号、事業目的、本店所在地などの絶対的記載事項を描きます。 第2章は株式で、発行する株式総数は、株券発行の有無、株式譲渡制限など株式に関することを記入します。 第3章では株主総会で、招集の手続き、株主総会の議長、株主総会の決議方法、株主総会の作成議事録など株主総会に関する決まりを記入します。 第4章は取締役および代表取締役で、選任できる取締役数や上限や下限、取締役の任期や、選任や解任方法などを記入します。 第5章は計算で、事業年度、剰余金の配当などを記入します。 第6章では、附則で、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称、最初の事業年度、発起人が引き受けた株主数などを記入します。
公証役場での定款認証

定款が完成してたら、株式会社の場合公証人役場で公証人による認証を受ける必要があります。定款の認証は二通りあります。
- 紙の定款認証
- 電子定款の認証
以下に説明します。
紙の定款認証の場合
紙の定款認証の流れは以下の通りです。
- 完成した定款を公証役場にメールまたはFAXする。
- 公証役場からチェック結果の連絡
- 必要に応じて定款の修正
- チェック完了後、公証役場に行く時間を予約
- 定款の受領
公証役場には発起人全員出向くことが原則です。 事情があって出向けない場合、最低1人の発起人とその他の発起人全員の委任状が必要です。
公証役場に持参する書類は
- 定款3通(すべての発起人記名押印が必要)
- 発起人全員の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 公証人役場に赴く発起人の本人確認資料
- 公証人役場に赴くことができないは発起人の委任状(実印の押印が必要)
- 4万円の収入印紙
- 現金、定款認証手数料52,000円+謄本発行手数料
- 発起人全員の個人実印(修正のために必要)
電子定款の場合
電子定款認証の流れは以下の通りです。
- 完成した定款を公証役場にファックスまたはメールする
- 公証役場からチェック結果の連絡
- 必要に応じて定款の修正
- チェック完了後、公証役場に行く時間を予約
ここまでの手順は紙の定款認証と同じです。 電子定款の場合ここから、パソコンの申請用総合ソフトから公証役場に電子定款を送信します。
電子申請の手順は別記事で詳しく解説していますのでその記事をご参照ください。 この後手続きが2020年の5月11日から導入されたシステムで2通りになりました。
直接、公証役場に出向き、CDーRまたはUSBメモリなどを持参しデータ保存する。
直接出向く場合に必要な書類や物は以下になります。
- 発起人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
- 当日公証役場に行かない発起人の委任状
- 定款認証手数料 52,000円
- 運転免許証、マイナンバーカードなどの本人確認資料
- 電子定款保存用CD-RまたはUSBメモリ
テレビ電話システムでの電子定款の認証
発起人か発起人が依頼した定款作成代理人が電子署名してオンライン申請したものに限り、テレビ電話でも認証が可能になりました。 テレビ電話をする場合はインターネット環境とパソコン、スマートフォン、タブレットが必要です。 パソコンの場合内蔵または外付けのカメラ、マイクが必要です。 推奨ブラウザはGoogleChromeです。 スマートフォンやタブレットでテレビ電話をする場合はFaceHubアプリの事前にインストールしておきます。 IOS、Androidともに利用可能です。
テレビ電話の流れは、
- テレビ電話の予約をする
- 予約完了メールを確認する。
- 予約日時になったら、公証役場のメールに記載されている「テレビ電話接続URL」をクリック。
- 公証人が表示されるので、会話をスタートします。
テレビ電話での定款認証の際に必要なもの
身分証明書 運転免許証、マイナンバーカード、住民基本台帳カードなど、 公証人手数料はインターネットバンキングでの事前振り込みが必要です。
法務局での登記申請

定款の認証が終わると、法務局に登記申請を行います。 一口に株式会社と言っても、形式が違うと必要な書類も変わります。 以下に説明していきます。
一人株式会社を設立する時に必要な書類
法務省では一人株式会社で株式会社を設立する場合は、オンライン申請をすることを推奨しています。
申請用総合ソフトをダウンロードする必要があります。 オンライン登記申請の手順と詳しい説明は 法務省の下記の記事で解説されています。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00117.html
必要な書類は以下の通りです。
- 合同法人設立登記申請書
- 登記すべき事項
会社定款の記載事項を記入します。 - 定款
- 発起人の同意書
- 設立時取締役選任及び本店所在地決議書
- 就任承諾書
- 払込みを証する書面
添付書面には電子署名が義務付けられています。 公的認証サービス電子証明書を使用することができます。 電子申請する場合はあらかじめ、【公的認証サービス電子証明書】を取得しておくことをおすすめします。
https://www.jpki.go.jp/
取締役会設置会社とは
取締役会設置会社は、文字通り取締役会を設置している会社です。
上場企業には設置が義務つけられていますが、その他の会社では義務ではありません。
取締役会を設置すると、3ヶ月ごとに取締役会議を行う必要があり、株主の総会の決議を通さないで、義務の意思決定ができるようになります。
発起設立と募集設立
発起設立とは発起人だけで株式会社を設立する場合を言います。いわば通常の法人設立の方法です。
逆に募集設立は、発起人の株式引受までは手順が同じですが、その後、発起人以外で株式の引受けをする者を募集します。
募集設立の場合、払込みをした取り扱いをした金融機関に払込金保管証明書の発行を依頼する必要があり、事前に金融機関との交渉が必要になります。
募集株式を引き受けするする人がみつかると、招集し創立総会を開催します。 その後、設立登記を行います。設立登記のには創立総会議事録の添付が義務付けられます。
取締役会設置会社の発起設立に必要な書類
取締役会設置会社の発起設立に必要な書類は次の通りです。
- 株式法人設立登記申請書
登記の事由 日付と発起設立手続きの終了と書きます
文例 令和3年4月8日発起設立の手続終了 - 登記すべき事項
会社定款で作成した記載事項を記入します。 - 定款
- 発起人の同意書
- 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
- 設立時取締役、設立時代表取締役及び設立時監査役の就任承諾書
- 印鑑証明書
- 本人確認証明書
- 設立時取締役及び設立時監査役の調査報告書及びその附属書類
- 払込みを証する書面
- 資本金の額に計上に関する設立代表取締役の証明書
- 委任状
その他の添付書類の例
- 株主名簿管理人との契約を証する書面
- 株主名簿管理人を置いた場合に必要になります。株主名簿管理人を選定した発起人の過半数以上の一致があったことを証する書面も必要です。
- 検査役の調査報告書及び附属書類
- 弁護士等の証明書及び附属書類
現物出資した時に必要になる場合があります。
有価証券の市場価格を証する書面
市場価格のある有価証券を現物出資した場合に必要です。
取締役会設置会社の募集設立に必要な書類
取締役会設置会社の募集設立場合に必要な書類は以下の通りです。
- 株式法人設立登記申請書
登記の事由 創立総会終了の年月日を記入して募集設立の手続終了と記入します。 - 登記すべき事項
会社定款の記載事項を全て記入します。 - 会社定款
- 発起人の同意書
- 株式申込書
- 払込金保管証明書
- 創立総会議事録
- 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
- 設立時取締役、設立時代表取締役及び設立時監査役の就任承諾書
- 代表取締役の印鑑証明書
- 取締役、監査役の本人確認証明書
- 設立時取締役及び設立時監査役の調査報告書及び附属書類(現物出資した場合に必要な書類)
- 資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書
- 委任状
その他の添付書類
- 株主名簿管理人との契約を証する書面
(株主名簿管理人を置いた場合に必要です。同時に株主名簿管理人を選定した発起人の過半数の一致があったことを証する書類も必要です) - 検査役の調査報告書
- 弁護士等の証明書
現物出資した場合に必要です。 - 有価証券の市場価格を証する書面
市場価格のある有価証券を現物出資した場合に必要です。
取締役会非設置会社の発起設立に必要な書類
取締役会非設置会社の発起設立の登記申請に必要な書類は以下の通りです。
- 株式法人設立登記申請書
登記の事由に年月日と発起設立の手続終了と記入します。 - 登記すべき事項
会社定款の記載事項を全て記入します。 - 定款
- 発起人の同意書
- 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
- 設立時取締役(及び設立時監査役)の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- 監査役の本人確認証明書
- 設立時取締役及び設立時監査役の調査報告書及びその附属書類
- 委任状
- 払込みを証する書面
その他の添付書類
- 株主名簿管理人との契約を証する書面
株主名簿管理人を置いた場合に必要です。同時に株主名簿管理人を選定した発起人の過半数の一致があったことを証する書類も必要です。 - 検査役の調査報告書
- 弁護士等の証明書
現物出資した場合に必要です。 - 有価証券の市場価格を証する書面
市場価格のある有価証券を現物出資した場合に必要です。
取締役会非設置会社の募集設立に必要な書類
取締役会非設置会社の募集設立の登記申請に必要な書類は下記の通りです。
- 株式法人設立登記申請書
登記の事由 創立総会の終了日を記載して募集設立の手続終了と記入します。 - 登記すべき事項 会社定款の記載事項を記入します。
- 定款
- 発起人の同意書
- 株式申込書
- 払込金保管証明書
- 創立総会議事録
- 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
- 設立時取締役及び設立時監査役の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- 監査役の本人確認証明書
- 設立時取締役及び監査役の調査報告書並びにその附属書類
- 資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書
- 委任状
その他の添付書類
- 株主名簿管理人との契約を証する書面
株主名簿管理人を置いた場合に必要です。同時に株主名簿管理人を選定した発起人の過半数の一致があったことを証する書類も必要です。 - 検査役の調査報告書
- 弁護士等の証明書
- 現物出資した場合に必要です。
- 有価証券の市場価格を証する書面
市場価格のある有価証券を現物出資した場合に必要です。
合同法人設立に必要な書類
合同法人設立登記の電子申請は別記事で紹介しています。
そちらを参考になさってください。
合同会社の定款作り
合同会社の定款は株式会社のように株式も株主も存在しないのでシンプルです。
また公証役場での会社定款の公証の必要がありません。
そのまま法務局での登記申請が可能です。
とはいえ、公証人のチェックを通していないので、間違いや抜け漏れがそのまま申請されるリスクがありますから、細心の注意が必要です。
一人合同法人設立時に必要な書類
法務省では一人合同会社で合同会社を設立する場合はオンライン申請をするこをを推奨しています。
申請用総合ソフトをダウンロードする必要があります。
オンライン登記申請の手順と詳しい説明は
法務省の下記の記事で解説されています。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00117.html
一人合同会社の設立に必要な書類は以下の通りです
- 合同法人設立登記申請申請書
- 登記すべき事項
会社定款の記載事項を記入します。 - 定款
- 設立時代表社員、本店所在地及び資本金を決定したことを証する書面
- 就任承諾書
- 払込みを証する書面(領収書の添付することもできます)
添付書面には電子署名が義務付けられています。
公的認証サービス電子証明書を使用することができます。
電子申請する場合はあらかじめ、【公的認証サービス電子証明書】を取得しておくことをおすすめします。
https://www.jpki.go.jp/
2人以上の合同法人設立時に必要な書類
二人以上で合同会社を設立する場合、必要な書類や記載事項が増えます。
- 合同法人設立登記申請書
登記の事由に 【設立の手続終了】と記入します。 - 登記すべき事項
会社定款の記載事項を記入します。 - 定款
- 代表社員、本店所在地及び資本金を決定を証する書面。
- 代表社員の就任承諾書
- 代表社員が法人である場合に必要な書類
- 登記事項証明書
- 職務執行者の選任に関する書面
- 職務執行者の就任承諾書
- 払込みがあったことを証する書面
- 資本金の額の計上に関する代表社員の証明書
- 委任状
法人設立の登記申請は専門家に任せましょう

以上、設立する会社の種類別に設立登記のための書類を解説しました。
合同会社より株式会社、1人で設立するよりも2人以上、発起人だけで設立するよりも募集設立、設立するために関与する人が増えれば増えるほど、提出する書類も増えていきます。
また公証人役場、法務局もそれぞれ、手続をスムーズにするために、頻繁にシステムや提出する書類を更新しています。 設立申請は常に最新情報を入手して、時代に対応できる専門家におまかせしましょう。