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銀行は決算書のどこを見る?|銀行が気にするポイントを徹底解説!

銀行は決算書のどこを見る?|銀行が気にするポイントを徹底解説!

融資審査を通過するかどうかは、経営に大きく影響します。資金調達の成否を分けるのが決算書であり、財務内容が多くものをいいます。しかし、銀行の見ているポイントは専門家以外には分かりづらいです。専門知識が必要なのはもちろん、そもそも融資審査を何度も経験するわけではなく、余計に不安に感じることでしょう。そこで、銀行は決算書のどこを見ているのかについて徹底解説します。

銀行が気にする「決算書」とは?

決算書とは「貸借対照表」と「損益計算書」のことを指します。

銀行に返済能力を証明するのが決算書

銀行は決算書の財務内容から借入金依存度と返済財源のバランスを比較して、返済能力をチェックします。

貸借対照表は預金や借入金の残高、自己資本など一定時点の財政状態を示す表であり、借入金依存度が分かります。

損益計算書は売上高や利益など一定期間の業績を示す表であり、返済財源と考えられています。

銀行か審査する決算書のチェックポイント

返済能力のチェックポイントとなる決算書の重要項目を紹介します。

【銀行が気にする】決算書のポイント①自己資本

自己資本とは、資本金などの「出資額」と利益剰余金などの「創業以来の累積利益」の合計額を意味し、返済義務はありません。この金額が大きいほど借入金の依存度は低いことを示すので、銀行が重視します。

しかし、銀行員は決算書の自己資本を鵜呑みにするわけではありません。貸借対照表のうち、資産価値のないものを損失に計上します。たとえば、「役員貸付金のうち、返済されない金額」などは自己資本からマイナスします。また別の例として、預金取引をメーンとする企業の現金残高が月商と同額など、不自然に多額の場合、銀行は資産価値がないと判断する可能性があります。

【銀行が気にする】決算書のポイント②預金残高

預金残高は取引履歴があるため、客観性があり、銀行が重視する項目です。

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【銀行が気にする】決算書のポイント③売掛金

売掛金は得意先から売上代金の未回収額を指し、銀行は2つの側面からチェックします。

ひとつは資産価値の有無です。たとえば、同じ得意先からの売掛金が入金されないまま、決算書に残っていれば、銀行は回収不能額として損失にカウントします。

もうひとつは架空計上があるかどうかです。納品後の入金日は決まっているため、取引条件と平均月商から売掛金の金額が推測できます。たとえば、売掛金残高が平均月商の2ヵ月分なのに、ある年度の決算書だけ3ヵ月に膨れ上がっていれば、銀行は架空計上と疑います。

【銀行が気にする】決算書のポイント④売上高・利益の推移

過去3年間のデータと比較して、売上高・利益の推移を見て、毎年安定した利益があるかをチェックします。たとえば、今期の決算書が黒字とします。それが3年連続なら銀行は安心しますが、前期が赤字なら「また転落するのでは」と評価が低くなります。

また、利益の種類はおもに次の通りです。

  • 営業利益営業・販売活動による利益を指し、銀行は借入金利子の支払い財源と考えています。
  • 経常利益営業利益から営業外費用(銀行利子など)を差し引いた金額であり、コンスタントに獲得できる利益を意味し、銀行が重視する項目の1つです。
  • 税引き後利益税金を差し引いた残りの利益であり、自己資本にプラスされる金額です。

【銀行が気にする】決算書のポイント⑤借入金

銀行は決算書の借入金から返済余力をチェックし、用いる指標は次の通りです。

  • 借入金月商倍率借入金を月商で割った倍率であり、3倍以内が健全と言われています。
  • ギアリング比率借入金を自己資本で割った比率であり、100%以内が望ましいです。
  • 債務償還年数借入金をキャッシュフロー額で割って求め、何年間で返済できるかどうかが分かります。

【銀行が気にする】決算書のポイント⑥減価償却費

減価償却費は現金支出の伴わない費用であり、返済能力を見るのに関係ない項目です。そのため、キャッシュフロー額は、税引き後利益と減価償却費の合計額で計算します。

また、減価償却費は利益の水増し計上に利用される項目でもあります。全く計上しなかったり、固定資産と比較して不自然に少なかったりした場合、銀行から粉飾決算をしていると判断される可能性があります。

銀行融資を引き出す!決算書の3つのポイント

決算書の内容を良くし、銀行にアピールすることが融資を引き出すためのポイントです。

銀行融資のための決算書のポイント①自己資本を増やす努力をする

自己資本が増えれば、借入金依存度は減少します。具体的な方法は2つあります。

  • 利益を獲得する自己資本は累積利益の蓄積で増やせます。事業活動で利益を獲得するように心がけましょう。
  • 役員借入金を資本金に組み入れる役員借入金を資本金に組み入れることで自己資本が増額します。

銀行融資のための決算書のポイント②決算書を自分で理解する

銀行に決算書をアピールするためには、自分で理解することが必要です。たとえば、役員借入金について返済義務のないことをアピールすれば、借金ではなく、銀行は自己資本としてカウントする可能性があります。また、売掛金がいつもの年度よりも多額の場合、原因をきちんと説明できれば、銀行から架空売上と疑われずに済みます。

銀行融資のための決算書のポイント③年度途中で試算表を説明する

試算表とは、年度途中の貸借対照表と損益計算書のことを指します。決算月から月数が経過すると、決算書のデータは古くなります。財務内容のタイムリーな情報を報告するために、試算表を銀行に説明する必要があります。たとえば、毎月メインバンクに定期訪問して業績を説明するなどが考えられます。

また、試算表に加えて資金繰り実績表も説明しましょう。現金預金の入出金をダイレクトに示しているため、借入金の返済能力が分かりやすいです。銀行に対する信用度は増し、融資を引き出すのに有利になるでしょう。

決算書に書ける実績がないなら事業計画書をしっかり作りこむ

決算書以外でも融資を引き出せる方法があります。

銀行は定量評価と定性評価をチェックする

銀行は金融庁から事業性評価を重視するように指導されています。決算書の定量評価だけでなく、財務以外の定性評価も融資審査の対象にすることを意味し、アピールするツールが事業計画書です。

事業計画書を作りこむ

事業計画書では「利益計画や資金繰り計画の財務内容」と「将来性、ビジョン、SWOT分析など財務以外の内容」を盛り込みます。特に定性評価は経営実態を銀行に理解してもらうためにしっかりと作りこみましょう。数十社の融資先を担当している銀行員は多忙であり、担当企業の業界についても詳しくないケースがあるので、丁寧な説明が必要です。

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銀行の情報や人脈を経営に生かす

銀行は事業性評価の情報に基づいて、企業支援が求められます。事業計画書を通じて、銀行員に自社のことを理解してもらえれば、販路拡大やビジネスマッチングなどにつながる可能性があります。ある銀行では事業承継コンサルティング、株式上場支援(IPO)経営コンサルティングなどを実施しています。

まとめ

事業拡大にはいつでも資金調達ができる状態にすることが必要不可欠です。そのためには、銀行から信用されることが大切であり、そのツールが決算書です。しかし、借入金の返済能力を正確に表す貸借対照表や損益計算書の作成は専門知識が求められます。売上高の推移ひとつとっても、たとえば前期より減少している場合、銀行員に対して一時的な落ち込みであることを説得する必要があります。銀行員の視点に立って決算書を作るのはもちろん、返済能力を示す説明力が必要です。融資審査を通過するかどうかは経営に大きく左右するため、銀行交渉に強い税理士を活用することも視野に入れましょう。

なお、きわみ事務所では会社設立や融資、資金調達の相談を受け付けています。代表税理士はITベンチャーで役員を務めた経験があるという、業界でも数少ない「経営者目線」のアドバイスができる税理士です。顧問税理士をお探しの際は、お気軽にお問い合わせください。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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