経営者にとって、交際費をどう活用するかは大切です。役員報酬と違い、税金や社会保険料が課されず、節税効果は意外に大きいのです。
しかし、一歩間違えると接待飲食費は経費で落とせず、会社の税金が課されます。税務調査で指摘されると、法人と個人に二重課税されるリスクがあります。
上手に節税するためには、接待飲食費の正しい知識が必要なので、詳しく解説します。
交際費とは
税法上の交際費は一部しか経費(損金)に計上できないのが原則です。そこで、交際費の定義と接待飲食費の範囲について見ていきましょう。
交際費の定義
交際費とは、接待、供応、慰安、贈答など事業にかかる費用を指し、忘年会費用だけでなく、お歳暮費用なども含まれます。また、相手先の範囲は得意先、仕入先、株主、役員、従業員になります。
飲食費
飲食費の範囲は次の通りです。
- 取引先を接待するための飲食代
- テーブルチャージ料やサービス料など
- 飲食に必要な会場費
- 行事の開催などに際して、差し入れる弁当代
- 飲食物の土産代
税金対策のための接待交際費に関するルール
税金対策のための交際費に関するルール
損金に計上できる接待飲食費
中小企業と大企業では損金に計上できる金額が違います。
中小企業
中小企業とは、資本金または出資金が1億円以下の法人であり、大企業の100%子会社などは除かれます。
中小企業の場合は次のうち多く損金に計上できる方法を選択できます。
- 交際費のうち年800万円(定額控除限度額)
- 接待飲食費の50%
たとえば、明らかに交際費が年800万円に満たない場合は定額控除限度額を選択して、接待飲食費の全額を損金に計上したほうが有利です。一方、接待飲食費1,600万円を超える場合、接待飲食費の50%を選択したほうが有利です。
大企業
大企業は接待飲食費の50%が損金に計上できます。
社外飲食費は一人当たり5,000円なら全て損金
接待飲食費でも社外関係者との飲食費が参加者一人あたり5,000円以下なら全て損金に計上できます。たとえば、得意先の接待にかかった忘年会の飲食代が5万円とします。参加者人数が10人以上なら全て損金ですが、9人以下なら交際費に含まれます。
ルールの適用条件は次の通りです。
条件1:社外飲食費の対象者
取引先、株主、親会社やグループ会社の役員・従業員などです。参加者が自社の役員や従業員とその親族のみの場合は社内飲食費として接待飲食費に含まれます。
条件2:帳簿書類への記載事項
次の事項を領収書または帳簿に全て記載します。
- 飲食年月日
- 参加者氏名または取引先の名称(例 ○○会社・□□部、△△部長他10名、卸売先)
- 参加者人数
- 飲食店、料理店などの名称・所在地
間違いやすい飲食費
飲食費の中には接待飲食費でなく、全額損金に計上できるものがあります。
忘年会の飲食代
社内の忘年会の飲食代は福利厚生費であり、基本的な条件は次の通りです。
- 従業員などの福利厚生を目的とした支出
- すべての従業員・役員において機会均等である
- 社会通念上、通常要する費用
「機会均等」とは忘年会に参加する機会を与える意味であり、欠席者がいても福利厚生費として認められます。一方、機会均等の単位は全社・支店・部署などになります。たとえば、機会均等である履歴を残すために、忘年会の案内を文字に残す工夫が求められます。
会議や打ち合わせの弁当や飲食代
会議や打ち合わせの弁当や飲食代など基本的は会議費になります。対象者は社内・社外の人間でも大丈夫です。会議費として認められるためには、会議や打ち合わせが実際に行われていることが必要です。取引先と居酒屋で打ち合わせとした場合、接待飲食費と誤解される可能性があり、それを防ぐためには、議事録を残すなど会議費であることを証明できるようにしましょう。5,000円基準は関係ないため、たとえ一人当たり5,000円を超えても全額損金に計上できます。

社外飲食費の5,000円基準
参加者一人当たり5,000円の基準は消費税の経理処理によって異なります。税込経理なら税込5,000円以下、税抜経理なら税込5,400円以下(2018年12月時点)です。ただし、消費税が免除される法人は税込経理しか選択できません。
一人当たりの社外飲食費の計算方法
忘年会などの二次会会場の場所によって、参加者人数の数え方が違ってきます。有志を募って一次会と同じ会場で行われた場合は両方を合わせて計算します。
一方、別々の会場の場合は、別々に計算します。たとえば、社外飲食費が一次会3万円、二次会3万円とします。参加者人数が10人の場合、同じ会場なら一人当たり6,000円となり、接待飲食費に含まれます。別々の会場なら一次会、二次会とともに一人当たり3,000円となり、全額損金に計上できます。
接待飲食費に含まれない費用
接待飲食費に含まれない費用は通常の交際費になり、50%を損金に計上することが認められません。
ゴルフ・観劇・旅行に伴う飲食代
ゴルフ・観劇・旅行に伴う飲食代はサービスと一体であると考えられるため、接待飲食費に含まれません。
贈答目的の飲食費
明らかに贈答目的である飲食物の詰め合わせの購入代は贈答費用になります。接待飲食費との境界線はすぐに消費できるかどうかです。たとえば、接待の帰りに折り詰めの料理は接待飲食費になりますが、調味料は贈答費用です。
接待会場までの送迎費
タクシー代など接待会場までの送迎費は接待飲食費に含まれません。
税務調査で問題になる項目
接待飲食費について税務調査で問題になりやすい項目を3つ紹介します。

社外飲食費の参加者人数の水増し計上
社外飲食費の参加者人数はチェックされます。水増し計上することで、一人当たり5,000円以下に操作することが可能です。たとえば、実際の参加者人数は5人なのに対し、領収書に6人と記載できます。
しかし、接待した経営者や従業員による水増し計上と発覚すれば、重加算税という最も重いペナルティが課されるかもしれません。隠ぺいしたという履歴が残り、税務調査の対象になりやすくなります。
不正経理と誤解される
接待飲食費を会議費など別の勘定科目で処理した場合、不正経理と誤解され、重加算税の対象になり得ます。しかし、税務署からの指摘に対し、たとえケアレスミスでも調査官に主張しなければ、隠ぺいした履歴が残ります。
役員賞与
経営者の個人的な忘年会の飲食代は役員賞与になり、法人と個人に二重課税されます。
しかし、事業用か、私的に使ったかの境界線は曖昧です。たとえば、情報収集のために接待飲食費を負担したとします。同業者との打ち合わせなら事業用として認められる可能性は高くなりますが、異業種の経営者との会合は役員賞与と指摘されるかもしれません。
まとめ
交際費のルールは細かく、複雑であり、役員賞与との境界線のあいまいさなど、明確な基準がありません。接待飲食費を利用して節税したのに、税務調査で間違いを指摘されると重加算税のリスクが潜んでいます。
また、会議や打ち合わせの弁当や飲食代は全額損金に計上できるのに、接待飲食費として会計処理をすれば、余分な税金がかかります。
接待飲食費を利用して節税するためには、正しい知識が必要であり、少しでも不安があるなら専門家に相談することをおすすめします。