コロナ感染対策として、確定申告の期間が1か月延長されると聞くと、ゆっくり申請業務が行えると安心してしまっていいのでしょうか。
まず、延長となるのは、下記の税金の申告期限です。
- 所得税・贈与税 3月16日⇒4月16日
- 消費税(個人分)3月31日⇒4月16日
今回の延長は個人だけで、法人税の延長はない見通しです。そして課税対象となるのは、去年の所得です。コロナウイルス感染の拡大で収入が大きく減少しているのに、売上が良かった昨年1年間が課税対象となり、納税しなければいけない点に注意しなければいけません。
今回の申告期限の延長が、中小企業経営者、個人事業主にとってメリットでしかないのか?を徹底的に深堀してみました。
コロナ感染の深刻化で、今年の確定申告がいつもと違う?
確定申告が必要なのは一言でいえば、「一年の所得が38万円以上ある」方です。
103万円じゃないの?と扶養範囲内と混同してしまっている方もいらっしゃるかもしれませんが、この38万円というのは、収入ではなく所得です。
パートなどの給料をもらっている人で基礎控除という65万円が自動的に103万円の年収からひかれて、38万円になっているのです。
会社勤めには、服や美容院代などいろいろかかる見込みがあるとして、経費が65万円分計上されています。
フリーランスで収入のある方は、事務用品、家賃、パソコン購入代など経費で計上できますから、これらの経費を差し引いて所得が38万円以下ならば、領収書などを保管しておくことで所得税に関しては確定申告しなくても大丈夫です。
しかし住民税は、1年間に収入がある時点で申告が必要です。所得税はかからなくても住民税だけ届出ないといけないのですが、住民税の申告を延長している市町村区は少数となっています。それに、住民税は申請書類が多くて手続きが少し煩雑です。ですから所得税がかからなくても確定申告しておけば、住民税も自動的に申告できます。
期限延長されるのは、所得税、相続税、消費税(個人)だけ

コロナ感染が深刻化して、収入面などで大打撃を受けている個人事業主、フリーランスの方々への救済措置として、今回の確定申告期限は延長されました。また青色申告制度を活用しようと開業届を出して、税務署に申請書を提出する期限についても延長ということになっています。来年から青色申告に切り替えられる準備をしておきましょう。
法人税の場合、決算日の2か月後までに税務申告するのですが、この申告期限の延長はありませんでした。今回の確定申告期限延長の対象は、個人だけということになります。
ここで、申告・納付等の期限を延長する主な手続を明記しておきます。
【申告所得税関係】
- 所得税及び復興特別所得税の確定申告
- 所得税及び復興特別所得税の更正の請求
- 所得税の青色申告承認申請
- 青色事業専従者給与に関する届出(変更届出)
- 所得税の青色申告の取りやめ届出
- 純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求
- 所得税の減価償却資産の償却方法の届出
- 所得税の減価償却資産の償却方法の変更承認申請
- 所得税の有価証券・仮想通貨の評価方法の届出
- 所得税の有価証券・仮想通貨の評価方法の変更承認申請
- 個人事業の開廃業等届出
【贈与税関係】
- 贈与税の申告
- 贈与税の更正の請求
- 相続時精算課税選択届出
【消費税(個人)関係】
- 消費税及び地方消費税の確定申告
- 消費税及び地方消費税の更正の請求
【その他】
- 国外財産調書の提出
- 財産債務調書の提出
参考:国税庁ホームページ
確定申告期限延長でどんなメリットがあるのか
期限延長でどんなメリットがあるのかを確認していきましょう。

人ごみへ出かける時期をずらすことができる
確定申告時期になると、役所などでは、税理士による無料相談会などが開催され、毎年多くの人が集まっていました。しかし期限を延長することで人の出入りを分散することができます。確定申告には年金受給者といった高齢者も多いことから考えられた対策なのです。
便利な電子申告、郵便申告も活用してみよう
確定申告は、e-taxなど電子申告や、郵便での申告も受け付けています。郵便の場合は、簡易書留で郵送して、申告書(控)に受領印を押してもらって返送してもらうための封筒と切手を同封する必要があります。
e-taxは、インターネット環境があれば申告可能です。この場合、マイナンバーカード方式の場合、マイナンバーカードが発行済みであれば、役所に出向くこともなく自宅で申請できます。
もう一つの申告方法であるID・パスワード方式ですが、まず役所でID・パスワードを申請する手続きが必要です。すでに申請済みであれば自宅から申告できますが、今年からID・パスワード方式を利用する方は、すでに発行済みのマイナンバーカード方式で申告することをお勧めします。
e-taxの大きなメリット
e-taxでは青色申告も対応しています。2021年、青色申告制度では特別控除額が65万円から55万円に引き下げられるのですが、e-taxで申告することで特別控除額は65万円のままとなります。
税金を納めるのに口座振替の場合も引き落とし日が延長
申告所得税は、口座振替の場合、5月15日になり、個人事業の消費税納付は、5月19日と延長されました。従来よりも引き落とし日が延期されることで、資金繰りにも少し余裕がでてくることになります。
参考:国税庁ホームページ
確定申告期限延長で注意すべき点
メリットについてご紹介してきましたが、ここからは注意すべき点をご説明します。

医療費控除は5年間申告できる
医療費控除で還付を受けるための申告は、コロナウイルス感染対策とは関係なく5年間にわたり申告することができます。現在令和2年ですから、令和7年まで申告できるということです。
ですから、今年の確定申告期限なでなくても、ゆっくりと来年にでも申告できます。申告が遅くなると還付も遅れてしまうというのは確かです。ただ、年金受給されている高齢者の方は、コロナ感染が心配な時期にわざわざ人ごみの中に出向かなくても、5年間あるのですからゆっくりと申告される方が安全ではないでしょうか。
FXや株式投資での配当金も確定申告期限延長に該当する?
長年、投資家であり毎年確定申告をしている方ならば、今年は延長されることがわかりますが、昨年から株式投資、FXを始めたばかりの方であれば、確定申告期限が延長されるか心配されているかもしれません。
答えは、「期限は延長される」です。株式の譲渡益、配当金、FX投資で得た利益も「所得」です。そして個人で保有しているものですから、確定申告を行う必要があり、そして確定申告期限も延長されます。
住宅ローン控除の申告も延長される?
これは新型コロナウイルス感染対策とは関係なく、住宅ローン控除の申告は確定申告期間に固定されたものではありません。医療費控除とおなじで5年間申告期間があるので、令和7年まで申告が可能です。
税金を納めるのが困難な方への救済措置
新型コロナウイルス感染の影響で、国税を一時に納められない場合、納税を1年間猶予されることがあります。これは税務署に困難であることを申請する必要がありますので、所轄の税務署へ相談してみてください。
参考:国税庁ホームページ
期間延長でも早めの申告を
確定申告することで、同時に住民税に関しても申告できるとお話しました。実は、市区町村では、住民税の申告も延期しているところがありますが少数です。ですから市区町村によっては、住民税の算出が間に合わないということも考えられます。なるべく早めの申告が必要です。
住民税の申告に関しては、延長があるかないかなども含めて、居住地の市区町村へ確認してみてください。
新型コロナウイルス感染症の終息について全く見通しが立たたない現状です。
今回のような確定申告などの税金面での変更事項は、先ほどもご紹介しています、国税庁のページをこまめにチェックしておくことをお勧めします。
参考:国税庁ホームページ
サラリーマンも確定申告が必要?
この項目では、サラリーマンとして給料をもらっている人が、確定申告が必要な場合をご説明していきます。

サラリーマンで確定申告が必要なのはこんな人!
- 退職した年で、年末調整をしていない
- 副業の収入が源泉徴収されている
- 高額な医療費を支払った
- 住宅ローン減税で年末調整をしていない
- 一定以上のふるさと納税と寄付を行っている
これらの5項目について、なぜ確定申告が必要かというと、税金を払いすぎたことによる還付があるからです。そして5項目において、確定申告期間だけでなく、医療費控除の項目でもご説明しましたが、5年間は申告を受け付けてくれます。
ただ、この5つの項目の中で、ちょっと気を付けたい項目が②です。給料から社会保険料が支払われているし、税金も天引きされていると思うかも知れませんが、それは大きな間違いです。社会保険料は、会社に加入している分でよいのですが、天引きされている所得税、住民税は、給料分だけが課税対象で、副業分は天引きされていません。
そして気を付けたい点は、給料から基礎控除され、その上扶養家族がいれば、扶養控除があります。すでに給料で通勤や家族にかかる経費は計上されているので、副収入には税金がかかることが明確なので、税務署の目が光りだすのです。マイナンバー制度の整備に伴い、複数から受け取っている収入額が居住地である市区町村にしっかり管理されています。
稼ぐサラリーマンは確定申告を忘れずに
昨今の働き方改革で、副業歓迎という企業も増えることで、稼ぐサラリーマンも増加傾向にあります。アフィリエイト収入やFX投資などでまとまった収入を稼ぐ方も実在します。日ごろから収支をきちんと管理する必要があります。
ただ、本業も忙しいうえに、経理業務まで行うのは大変です。そんな時は、会計ソフトの導入も必要ですが、専門家である税理士と顧問契約することも検討すべきです。
「税理士はお金かかりそう」と不安に感じかもしれませんが、決算の時だけ依頼して、決算料だけを支払う契約もあります。そしてその税理士への報酬も経費として計上できるのです。また節税などのアドバイスももらえますから、実質、税理士顧問料がごくわずかしかかからない結果となります。
新型コロナウイルス感染対策での確定申告期限延長のまとめ
国税庁のホームページは、このところ連日のように更新されています。
また、居住地である市区町村のホームページもこまめにチェックしておくことがお勧めです。そして、個人事業主の方はもちろんですが、副業で稼いでいるサラリーマンの皆さんも、是非税務のプロである税理士のアドバイスを受けてみてください。